たこわさ

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revisions リヴィジョンズ Case2「勇者願望」感想――非常時には「常識」を切り替えられない者から死んでいく

revisions リヴィジョンズ 1 (ハヤカワ文庫JA)


今回の満足度:5点(5点満点中)
(以下ネタバレ)

あらすじ

待ち望んでいた「危機」、そしてミロとの再会。
大介は、異常事態のさなかにもかかわらず興奮を隠せない。

ミロから託された「ストリング・パペット」でリヴィジョンズに立ち向かう大介。
初めて操るそれに戸惑いながらも、大介は果敢に立ち向かい、リヴィジョンズを撃破しつつ、内部に捕縛された人々も無事に助け出す。

だが、未だに異常事態の現実を把握できていない生徒の一部は大介を「テロリスト」呼ばわりし、侮蔑する。
「俺が守ってやったのに」と逆上した大介は、ストリング・パペットを動かして自分の力を見せつけようとするが――。

感想

大介が清々しいまでのダメ人間で、「ああ、谷口監督作品っぽい」と苦笑してしまった。

もちろん、彼の全ての行動は自分が「よかれ」と思ってやっていることであり、人命を優先してみせた点から見ても、彼の性根自体はむしろ善人であることが伺えるが……それ以上に、過去のミロからかけられた呪縛が強いゆえか、「自分がヒーローになって皆を救うことが最上の使命」だと思いこんでしまっているようだ。

現場に駆けつけた剴が、事の真偽も確かめずに大介を非難しようとした姿には違和感を覚えたが、なるほど、彼は大介がどんな状態なのか、次にどんな問題を起こすのかをよくわきまえていた、ということか(苦笑

異常事態を受け止めきれず場違いな発言を続ける生徒や区民達の姿は、視聴者のヘイトを集めるための存在……というだけではないのだろう。
私もいくつかの災害の当事者になっているので分かるのだが……非常事態時には、ぎゃーぎゃーと益にならないことを喚き散らし場をかき乱す、公にも私にも迷惑な人間がつきものだ。どこからともなく現れて、普段の常識が通じないシチュエーションに立ち向かおうとしている人間に、その時点では全く何の助けにもならない常識を押し付け、周囲を巻き込んで自滅していく輩が。

震災などを経験する前ならば、私もああいった存在を「物語の肥やし」と考えていただろうが、今はやけにリアルな存在として映ってしまう。
制作側もその辺りを意識して描いているのかもしれない。

平時には平時の「常識」が、非常時には非常時の「常識」がある。
これを切り替えられない人間は、真っ先に犠牲になるか、周囲を巻き込んで自滅していく。

渋谷警察署長の黒岩は、なんとも腹に一物もつ食わせ者感があるが、リアリストかつ手段を選ばぬ狡猾さも見せてくれた。「臨時政府」というのも彼の発案か。
平時ならばお近づきになりたくない彼のような人物の方が、非常時には頼りになるのは皮肉だ。
その点については、区長も同じ穴の狢と見える。保身第一だが、その分「重要な仕事は出来る人間に任せる」という傾向も強いので、「無能な働き者」には決してならない。そういう意味では、彼のような人間がトップでよかったのかも知れない。

黒岩と区長は、随分とあっさりミロの言い分を信用してしまったようにも見えるが……ミロがそれだけの情報を二人に与えている、と考えるべきだろう。
リアリストと保身に長けた人間……ある意味でこれ以上に話の通じやすい人間はいないかも知れないw

二人がもっと俗物的な人間だったなら、ミロは一体どういう手段を使っていたのだろうか? などと考えると、物語に深みが出てくるのではないだろうか?*1

OP主題歌CDは3月リリース。配信版は先行リリース済

主題歌「ワガママで誤魔化さないで」は、CDリリースは3/13だが、iTunes/Apple Musicでは先行配信されている模様。

THE ORAL CIGARETTESは、「ノラガミARAGOTO」や「サクラダリセット」でも楽曲を担当していて、私的には耳に馴染み深いので、安心して聞ける。

ワガママで誤魔化さないで

ワガママで誤魔化さないで

  • THE ORAL CIGARETTES
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

*1:ミロが二人にどんな話をしたのかが描かれなかったので、「洗脳でもしたのか?」などと一瞬考えてしまったw