たこわさ

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かくしごと 第12号「ひめごと」感想――いい最終回だった

「かくしごと」 「ねがいごと」


今回の満足度:5点(5点満点中)
(以下ネタバレ。原作バレやや配慮中)

あらすじ

鎌倉の家で、父の隠し事を知った姫。
そして今、彼女の傍に父・可久士の姿はない。
とある不幸な事故により、可久士は姫の傍にいられなくなっていた。

そんな姫の前に現れた謎の少年。
姫の事を「姉さん」と呼ぶ彼の口から、姫は父の更なる「隠し事」を知ることになった。

遂に明かされる全ての隠し事。
可久士の身に起きた異変とは? 彼は姫のもとへ戻る事が出来るのか――?

感想

――という事で、原作よりも先にアニメが最終回を迎えることになった。

原作者の久米田康治氏は、アニメ化にあたって制作側から「アニメとしての一区切りをつけたいので、良いポイントはあるか?」と問われた際、「じゃあ、アニメと一緒に原作も終わらせましょう」という、なんとも思い切った提案をしたそうで……アニメで描かれた最後は原作とある程度同一の内容、ということになるそうだ。

原作から入った身としては少々複雑な気分ながらも、想像以上に素晴らしい最終回を見せつけられたので、今は満足感に包まれている。

とは言え、全12話の枠に収める為か、アニメではカットされたエピソードも少しだけ見受けられる。
特に「風のタイツ」アニメ化云々の話は、原作でも屈指のエピソードなので、アニメだけ観ている方も是非とも原作に手を出していただきたいところ。

かくしごと コミック 1-11巻セット

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さて、物語は一応のハッピーエンドを迎えた。
ブランクや風評はあれど、可久士のことだから、漫画家に見事に復帰してくれることだろう。――今は羅砂のスタジオに寄生しているようだがw
志治らがアシスタントとして漫画界に戻ってきているところも、基本的には明るい未来の示唆だと受け取れる。

その一方で……千田奈留の存在が悲しい。
アニメでは必要最低限の描写になっていたが、可久士が断筆したきっかけになった「美談」の記事は、原作では奈留が書いたことが明かされている。
あの取材シーンは、彼女なりの罪滅ぼしの気持ち、という事だ。
原作では更に、彼女が頻繁に可久士の病室を訪れている節も描かれているのだが……アニメではその辺りがカットされた。

アイドルにも画家になれず、週刊誌記者となった奈留。
善意のつもりが、後藤親子を奈落へと突き落す結果をもたらしてしまった奈留。
後藤親子は無事に明るい場所へと戻れたが……彼女が一体どうなってしまったのかを考えると、中々に切ない。原作でフォローがあることを願いたい。
――そういう意味では、一子先生は結婚できたのかということも(ry


他方、自他ともに認める「成功者」が羅砂だろう。
羅砂が成功して、マンガジンの看板漫画家になっている、という未来は少々予想外だった。
彼女は「代官山に近くてクリエイティブな仕事」を探して可久士のアシスタントになっただけなので、漫画に拘りは無かったように思っていたが……。

思い返してみれば、彼女は常に公私に渡って可久士をサポートするポジションにいた。
可久士の後妻or愛人ポジションを狙っているような発言もあった。
……もしかすると、羅砂は案外と本気で可久士のことが好きで(恋愛感情には限らないが)、彼の愛した漫画というものも好きになっていたのかもしれない。
可久士の出自や家庭の事情に詳しかったのも、その辺りが関連しているのでは……と邪推すればキリが無いが、本編では描かれなかったところなので、妄想にしかならない。この辺りにしておこうと思う(苦笑

それこそ、「言わぬが花」と作者が読者に隠した「かくしごと」なのかもしれない……。

――閑話休題。

とにもかくにも、この「かくしごと」という作品は、原作をきちんとリスペクトしつつ、過去と未来とで絵柄や視野、色彩のタッチを変えることで視聴者に対し「姫の世界観の変化」を如実に表してみせた、名作だったという印象が残った。
原作付きでここまで見事なものは、一年に一本見られるかどうかだ。
新型コロナウイルスという災禍に見舞われ、アニメ業界が惨憺たる有様になっている中で、こんな素晴らしい作品に出会えたことは、後々まで良い思い出として残ることだろう。

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君は天然色

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