Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-　Episode 15「新しいヒトのカタチ」感想――死闘決着……のはずだったが

今回の満足度：5点（5点満点中）
（以下ネタバレ。原作バレやや配慮中）

あらすじ

封じていた神性を開放し、ゴルゴーンへと立ち向かうアナ。
彼女が召喚された理由――それは、完全なる怪物へと変貌してしまった「自分自身」を打倒することであった。

魔眼同士がぶつかり合う中、藤丸達の援護を得て、遂にアナの「不死殺しの鎌」がゴルゴーンを捉える。
崩れ落ち、地割れに飲み込まれていくゴルゴーン。アナもまた目的を果たしたことで力尽き、共に奈落へと姿を消してしまう。

大きな犠牲を払って得た勝利――だったはずが、特異点はまだ消えない。
そればかりか、海の底に封じられていたはずの原初の力が蘇り、海を覆い始めてしまう。

全ては、マーリンが封じていた本物のティアマトを呼び覚ますための、キングゥの罠だったのだ。
地上には「新しい人類」と呼ばれる異形の怪物たちが現れ、人々を殺戮し始めてしまう。
それは堅牢なウルクも例外ではなく――。

Episode 0 「Initium Iter」

発売日: 2019/08/12
メディア: Prime Video

感想

ラフムの声が内山夕実さんという辺りに、制作陣の鬼畜属性を感じてやまない（挨拶）。

ゴルゴーンは怪物メドゥーサの成れの果て。
大切な姉たちをも取り込み、自分を殺した人間への復讐にだけ固執した姿。
それを止めたのが、怪物になる前の愛らしい姿の彼女自身だった、というのは皮肉にしても出来すぎている。

アナが振るっていたのは、ハルペー（ハルパー）。
他でもない、英雄ペルセウスがメドゥーサを倒した時に使った鎌だ。ゴルゴーンを倒すのに、これ以上相応しい武器は無いだろう。
「自分を殺した武器」を振るっていたアナの気持ちを考えるとまた複雑だが……。

なお、冒頭に登場した双子は、メドゥーサの姉のステンノとエウリュアレ。
FGOではそれぞれ微妙に容姿も性格も異なる二人だが、今回は神話上の彼女達自身として描かれたので、全く同一の姿として描かれた。*1
FGOでは、第二章と第三章でそれぞれ登場しているので、プレイヤーはより深くゴルゴン三姉妹の物語に触れてから第七章の物語を知ることになる訳で……エモいことこの上ない。

戦いは終わらない

さて、そんなアナとゴルゴーンの悲劇を乗り越えた先に待っていたのは……更なる地獄だった。
「新しい人類の姿」であるラフムは、人類以上の残虐性をもって顕現した。キングゥすらも嫌悪させるその不快感は、今回描かれた通り。

……そして、そのラフムの犠牲となったメインキャラクターが一人。シドゥリだ。
アニメでもゲームでも、主人公たちを優しく見守り、時に王への意見も辞さない、強くも優しい女性。
それがあんな無残な姿に成り果て……それでも己を失わずにいたという事実が、なんとも心をえぐる。

FGOバビロニア15話、2パート原画で参加させていただきました。”無抵抗なラフム”やりました。ありがとうございました！#FGO #FGO_ep7 #バビロニア pic.twitter.com/tQq23xLmxM
— やゃ (@ra0ra3) January 25, 2020

ゲームでは、一部プレイヤーにはあのラフムの正体が気付きにくいように描かれている。
なので、気付かずにラフムを痛めつけてしまうと……後で深い後悔に襲われるという鬼畜な構成になっていた。
菌糸類の鬼畜脚本である（苦笑）。

ギルガメッシュ王とシドゥリの最後のやり取りも注目したい。
公正な王としての態度を崩さなかったギルガメッシュが、シドゥリが民の救援に向かうと言った途端、感情をむき出しにしてそれを止めた。
その態度に何かを察したシドゥリは、慈愛に満ちたまなざしだけを王に向け……王は彼女の申し出を許した。

ギルガメッシュ王は、千里眼――つまりある種の未来予知の持ち主だ。
シドゥリがその行動をとればどうなるか、分かっていたからこそ強く止めたのだろう。王としての公平性に反してまで、だ。
そんな王の内心を読み取り、全てを受け入れて見せたシドゥリの献身たるや……涙を禁じ得ない。
ギルガメッシュ王とシドゥリの関係がただの主従ではなく、もっと深い信頼で繋がれたものであったことが窺える。

それはまたイシュタルも同じだったようで、藤丸よりも早く、あのラフムの正体に感づいたようだ。
彼女の存在がギルガメッシュ王やイシュタルにとって、どれだけ大きかったか……藤丸達にとってもどれだけ大切な存在になっていたか……それを思い知らされる一幕だった。

なお、筆者もゲームプレイ時の記憶と相まって、今回のエピソードが終わった後、しばらく動けなかったことを併記しておきたい。