(以下ネタバレ)
あらすじ
一騎は島のコアの祝福を受け存在し続けることを選び、美三香は肉体を取り戻し、そして人類軍に囚われていた真矢も無事に島に戻った。だが、その一方で「いなくなった」者達が。海神島を守り抜き力尽きた暉、物言わぬ姿で島へ戻って来た広登。島の人々を悲しみが包んだ。
しかし、世界は竜宮島と海神島を放ってはおかない。プロメテウスとミツヒロ、そしてプロメテウスに唆されたバーンズが二つの島を目指して進軍を開始していた。その部隊の中には、プロメテウスによって「造られた」アイ、そしてミツヒロによってダスティンの復讐を果たすよう囁かれたキースとビリーの姿もあった。
大きな戦いを前に、一騎達の成人式が行われる事になった。自らの生存限界が近い事を感じる総士は、まだ見ぬ誰かに対するメッセージをマークニヒトに記録し始め――。
感想
王大人死亡確認――ってそれ全然死亡確定してないじゃん! ……などとノリツッコミをしないと最早心が持たない位に暉の死が悲しすぎます。美三香みたいに一時的に肉体を失ったとかだったらどんなに良かったことか。残された里奈ちゃんが不憫すぎる。
そして広登の死を悟った瞬間の芹ちゃんの表情が……ある意味この作品で一番胸が痛んだ瞬間かもしれない。無言でその事実を伝える総士の表情がまた辛い。冷静な顔して本当は誰よりも仲間想いな総士が、どんな気持ちであの無表情を貫いたのかと思うと……。
その他にも、Aパートは広登の「遺体」と父姉の対面のシーン、真矢がカノンの帽子を抱きしめて「ただいま」を言うシーンなど、辛い「別れ」のシーンが続いて実に心を抉ってくれました。そういった立て続けに起こった「別れ」を目にして総士が至ったのがあのメッセージだというのが、また。第一話の冒頭で流れたあまりにも不吉なデスポエム――というか遺言ですが、大切な者達との別れやそれに伴う悲しみ、そして彼らが人々の心に遺した数々のものを見て、総士も思う所があったのでしょうね……。その後の戦闘での吹っ切れ振りも凄まじかったですが(笑)。
そういった流れを経ていたもので、一騎達の成人式の件はなんというか……長年見守って来た子供達が成人したかのような感覚も相まって、真壁司令の言葉に目頭が熱くなってしまいましたわ。あくまでも彼等に「人間を撃て」とは命じない、その確固たる意志。敵に取り込まれている事が明らかであっても、決して人間を撃たせないその姿勢を「甘い」と思う人も多いでしょうが、人間相手に容赦しない事を覚えてしまっていた真矢が再び「殺さない」という選択を取れたのはきっと司令の言葉もあったからなのではないでしょうかね。*1「正当防衛」と言えば聞こえはいいですが、後に残るのは「殺し殺された」という事実だけなわけで。「戦争だから」「こちらが殺されそうだったから」というのは、殺した方も殺された方も救わないただの言い訳である事は、本作では散々描かれてきましたし。
他にも、吹っ切れすぎて結果的に彗の煩悩を深めてしまったような里奈ちゃんとか、広登の死の悲しみを乗り越えた舞が溝口さん達に送った言葉だとか、コアを生かす為に自分達が人身御供となる事を決めたエメリー達の姿だとか……実に色々な想いがこもったエピソードでした。
そういった想いがこもっている事もあって、後半の戦闘パートは息もつかせぬ緊張感と共に燃え上がるような高揚感をも与えてくれて……そして同時に「ああ、もうすぐ竜宮島の皆ともお別れなんだ」という想いも湧いてきて。
泣いても笑ってもあと一話、竜宮島の人々がどんな希望を手に入れてどんな未来を切り開くのか、心して待ちたいと思います。
あと、今回の裏MVPはやっぱりギャロップでしょうかね。まさかあそこまで真矢にデレてたとは……。彼女は決して彼女の目的を諦めないでしょうが、それでも人として捨てきれない何かを真矢の姿に思い出したのかもしれませんね。……まあ、そもそもこの人が元凶なんでナイスアシストも何も無いと言えばないのですが(笑)。それでもやっぱり、この人も情を捨てきっていなかったのかも、と思うと少しだけ救われた気分に。