たこわさ

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笹倉綾人「ホーキーベカコン」1巻・2巻が発売――谷崎潤一郎の淫靡なる怪作「春琴抄」を見事な筆致でコミカライズ!

ホーキーベカコン1


倒錯した情愛を描いた、谷崎潤一郎の怪作「春琴抄」を、笹倉綾人氏が独自の解釈を交えつつコミカライズした本作。
遂に単行本が発売です。

ホーキーベカコン1

ホーキーベカコン1

ホーキーベカコン2

ホーキーベカコン2

単行本には描き下ろしもあるとのこと。


掲載誌が「電撃G'zコミック」ということもあり、原作では細かい描写のなかった(行間でしか示されなかった)変態的な一部エロスについても、直接的に描写されているが特徴。

R-18という訳ではありませんが、性的描写多めです。
過激な(そして文学的な)エロスが苦手な方には、少々刺激がきついかも知れません(苦笑

「倒錯的」という言葉がよく似合う作品で、読者の解釈によって万華鏡のようにガラッと風景が変わるのも本作の特徴。
変態性愛にも見えるし純愛にも見える、はたまたただの肉欲にも見える……。

色々な意味でゾクゾクする作品です。

そもそも「春琴抄」ってどんな話?

時は江戸末期。
裕福な家に生まれ美貌持ちながらも、病により失明した少女・琴。
やがて三味線の師匠として名声を高めていく彼女だが、その陰には奴隷の如き扱いを受けながらもひたすらに彼女に尽くす、年上の弟子・佐助の姿があった。
傍から見れば酷い仕打ちを受けるばかりの佐助だったが、二人の間には一言では言い表せぬ倒錯的な情愛が渦巻いていて――というのが物語のあらまし。

単純な言葉で言ってしまえば、サディズムとマゾヒズムのぶつかり合い……なのですが、琴と佐助の関係はそういう単純な言葉では割り切れぬ描かれ方をしており、「ああ、こういう気持ち悪いものこそが『気持ちの良い文学』だよな」などと読者に思わせてしまう、なんとも奥深い作品です。

現在は青空文庫でも読めますが、本作の特徴として「句読点や改行を意図的に少なくしてある」というものがありまして、デジタル媒体だと少々読みにくいかも知れません。

春琴抄 (新潮文庫)

春琴抄 (新潮文庫)

新潮文庫版の紙の書籍もまだ普通に売ってますので、雰囲気を味わいたい方にはこちらがおすすめです。

春琴抄

春琴抄

また、何度か映像化もされております。
上記は山口百恵さんと三浦友和さんの主演。当時のビッグスターお二人の主演というだけで、本作の偉大さが少しは伝わるのではないでしょうか?