たこわさ

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アルスラーン戦記 第十八章「ふたたび河をこえて」感想

今回の満足度:4点(5点満点中)
(以下ネタバレ)

あらすじ

神前決闘はラジェンドラ側の勝利に終わり、次期国王は定まった。自らが見込んでいたラジェンドラ勝利に安堵するシンドゥラ王だったが、最早余命いくばくもない彼は、最期の頼みとしてラジェンドラにガーデーヴィの命を安堵するよう言い残す。ラジェンドラの快諾を見届けた王は、そのまま眠るように息を引き取った。
しかし、父王亡き後のラジェンドラはその狡猾さを隠す事もなく発揮し始める。手始めに、彼はガーデーヴィの為に盛大な宴を開くが、それは「処刑を待つ罪人の為に宴を開き、末期の酒を振る舞う」という風習を強く思い起こさせるものだった。不敵な笑みを浮かべ挑発するようなラジェンドラの言葉に逆上したガーデーヴィは、その場に現れたアルスラーンを「疫病神」と罵り凶器を手に襲い掛かる。すんでのところでラジェンドラの兵がガーデーヴィを押さえつけるが、「客人を殺そうとした」という大義名分を得たラジェンドラは無残にもガーデーヴィをその場で処刑する。
やがて、アルスラーンらがパルスに帰国する日がやってきた。ラジェンドラは恩義に報いるためと称し、アルスラーンシンドゥラ兵3000を預けるが、彼の狙いはアルスラーンへの助力ではなく、兵達にパルス軍を襲撃させる事にあった。部下にその事を明かし「アルスラーン殿を鍛えるため」とその理由を語りほくそ笑むラジェンドラだったが、彼の背後にはジャスワントが潜んでおりその一部始終を耳にしていた――。

感想

父王の死に号泣したラジェンドラを「生まれながらの演技者」というナルサスの評価はいいえて妙、という所。彼にとっては心からの涙が同時に策略の道具であり、裏切りでしかないアルスラーンへの仕打ちへの「見込みのある若いアルスラーンを鍛えるため」という言い訳も多分本心なんでしょうね。もちろん、あれでアルスラーンが死んだとしても未来の強敵を葬った事になりそれはそれで上々の結果、なんでしょうが(苦笑)。
ラジェンドラは策謀家ですが悪人ではない。だからこそアルスラーンは彼の命をとらず許し、その一方で実を取って、しばらくの間「飼い殺す」事でシンドゥラ周辺国に対する防波堤として利用したんでしょう。情のアルスラーン、策謀のナルサスのコンビネーションといったところか。
ジャスワントアルスラーンに仕える際の宣言がまた絶妙。本心ではアルスラーンに心から仕えるつもりなのに彼が気に病まぬようにあえて祖国の事を引き合いに出したようにも感じました。