たこわさ

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「バディ・コンプレックス 完結編 -あの空に還る未来へ-前編・後編」感想

二期じゃないのが残念ですが、こうしてきちんと完結させてくれるだけでも僥倖というもの。
(以下ネタバレ)
TVシリーズ最終話直後から話はスタート。雛の扱いがどうなるのか心配していましたが、予想以上に真っ当でまずは一安心。やっぱり艦長はナイスガイ。
30分2話という限られた時間内でどれだけの事をやってくれるのか不安でしたが、むしろテンポよく話が凝縮されていた事で面白く観られました。
TVシリーズで明かされなかった様々な伏線、どうして青葉と雛はカップラーとして異常な才能を持っているのか? ループする以前の雛の本当の生い立ちはどんなものなのか? などは駆け足ながらもきちんと語られていて、その点も満足。カップリングシステムによる記憶・精神の混線という便利なギミックをきちんと活かしていた印象。
完全なる悪役となってしまったビゾンについても、TVシリーズのストーカー気質ながらも表面上は一途な青年に見えなくもない印象を、カップリングシステムでの精神交感により「エゴの塊」であった事が明かされて、同情する余地を残しつつも青葉達が彼を撃つことに迷いを感じないし、視聴者的にも彼の打倒にカタルシスを感じるような脚本になっていて見事。
青葉・ディオ・雛の三者によるカップリングや、物語のキーワードでもあるカップリングシステムによる時間跳躍を一番の見せ場に持ってきた辺りも実に「分かってる」な、と。
青葉がカップリングシステムの大本になった人物だという予想は、TVシリーズ放送時に私を含めた大勢の人が提示していた所ですが、雛も被検体でありカップリングシステムの暴走が彼女のタイムリープの始まりになった、という所はちょっと予想外でした。ちょっと考えれば分かりそうなものだったんでしょうが……。
本作での時間跳躍は、一種の物質の情報体化によるものだと理解できますが、そうなると雛が幼い姿でタイムリープしていたり、最後に青葉と雛がもといた時代で何事もなかったように生活している理由も分かってきますね。
ループしていた時間も並行世界というよりは、同じ時間軸に複数の情報が並列して存在している、という事であって、雛が幼い姿で記憶をなくしてタイムリープしたのも、カップリングシステムで青葉達が知らないはずのループした時の流れの中での出来事を知ることが出来たのも、最後に青葉達が元の生活に戻れたのもその為なんでしょうね。各時代で矛盾ないようにある程度修正された存在としてタイムリープするけれども、時間軸の中で芯となる部分――最後に青葉と雛が出会った事で生まれた状況から続く一本の線に最後には落ち着いたという。*1
まあ、ディオの親友である青葉が最早情報上でしか存在しないという事実はちょっと寂しいものがありますが、ループ中の情報も失われたわけではないのは本編でも描かれている通りなので、もしかすると何らかの形で二人が「再会」する事はあるのかもしれませんが。

さて、TVシリーズがきれいなハッピーエンドで終わった作品はえてして、続編で主人公達が悲惨な目にあったりして台無しになってしまうものですが、本作は全くそんなことはなく実に爽やかな終わり方をしてくれました。奇をてらった脚本や演出にとらわれず、正道を貫いてくれた制作陣に惜しみない拍手を送りつつ、バディ・コンプレックスという素晴らしい作品に出会えた喜びに浸りたいと思います。

*1:物凄くざっくり書いてますが、世界線理論に近いと思ってやってください。