劇場上映も終了したので、私見をまとめておきたいと思います。
念の為書いておくと、私はストレイ実装とほぼ同時にプロデュースを開始したPです。
アイマスシリーズの中で、シャニマスに費やした時間は、デレマスの次くらいに多いです。
(以下、ネタバレ含む感想)
はじめに
最初に本作に対する私の端的な感想を書いておくと
- ライブシーンは目を見張るものがあったが、それ以外は退屈な睡眠促進映像集
でした。
長い長い豪華プロモーションビデオ、と言い換えてもいいかも。
だから多分、ドラマの濃厚さとか求めてる人には向かないのだろうな、と。
そして恐らく、制作側も濃厚なあれこれを求めている人の為には作ってない。あくまでもファンムービーというか、そういうものを求めている人をフォーカスしている印象を終始受けました。
なので、そもそも私は想定される顧客層にすら入っていなくて、上記のような不満たらたらの感想になるのも当たり前なのだろうな、と。
以下はそういう、シャニマスからは最早ターゲット層として認識されていないロートルが思ったことを書き散らした内容になります。
予めご了承の上、ご覧ください。
ストーリーは「シャニマス(うす塩味)」
三部作すべて観て、素直に思ったことがこれ。とにかく薄い。話もキャラも。
カルピスを倍の分量の水で割っちゃった感じでした。
恐らく最初の一年、もっと具体的に言うとストレイライト加入前までの、あんまり殺伐としてないシャニマスのイメージを再現することに腐心したのだろうけど、それにしても薄すぎました。
真乃視点で進むからか、それぞれのユニット主役のエピソード以外は、
- 真乃が思い悩む
- 他のメンバーと交流する
- なんかしらんが自信を付ける
の繰り返しでワンパターン。
大きなドラマが何も起こらないので、台詞もなんだか少なめ。
ひたすらレッスンして、ちょっと雑談して、ご飯食べて、風景映して。その繰り返し。
真乃自身の日常は殆ど描かれなかったので、最後までどんな娘なのかすら伝わってこなかった。
当然、他のキャラの掘り下げも無し。
端的にそれぞれの特徴を表すような小話が入ってくるのかな? と思いながら観ていたけれども、ほぼ無し。精々園田がチョコをカレーにぶち込むシーンくらい?
凛世や千雪や恋鐘のPラブ具合とか、霧子の不思議空間とか、三峰のオタク振りとか、夏葉の華麗なる私生活とか、小ネタに使える要素は沢山あったはずなのに、ほぼ出番なし。精々、チラッとそれっぽいワンシーンが入るだけ。
最後のライブへ向けた山場も、「みんなで頑張って乗り越えました。終わり」と薄味。
例えばここで、「指先の表現や立ち振る舞いに悩む」シーンがあって、モデル経験者の咲耶や日舞経験者の凛世のアドバイスが活きるついでに、二人のキャラクター性がエピソードと共にクローズアップされる……みたいに個性を活かしたドラマがあれば引き締まったのでしょうが、そういう個性を活かした展開はなし。
他のメンバーがアドバイスしてなんか上手くいきました! という単純なシーンしかない。折角のキャラの個性が死んでいる。
上記までのように、シナリオはお世辞にも濃密とは言えず、正直第二章までで全部のストーリーを消化して、残り四話はストレイ、ノクチル出せばよかったんじゃ? という感じでした。
まんきゅうと加藤陽一というビッグネームを使っておいてこの薄さ。一体どういうことでしょうか。
目線だとか仕草だとか背景だとか、ちょっとした描写の変化で感情の機微とか関係性を表している……と思しきシーンが多めなので、多分そこから伝わるものを重視しているのでしょうが……。
視聴者も馬鹿じゃないので、大概の方はキャラの仕草とか、その辺りに何か寓意があるのだろうなってのは読み取れると思うんです。
でも、それだけ。初見の方は、その先の広がりに期待してくれるような大らかな視聴者ばかりではない。
原作経験者にいたっては、「君のその読解は、本当にアニメだけから受け取ったものかい? アニメではビタイチ語られてない原作の描写を手掛かりにしてないかい?」ってなるところで、うん。
キャラの仕草……もっと言えば「演技」から様々な情報を醸し出す手法なんて、多くの創作物は当たり前にやってることな訳で。
それに特化しようというのなら、それこそキャラクターの内的世界の深淵を伺わせるような思い切りの良さがないと。
部活でキャッキャウフフしてる女学生を傍から見て喜びたい訳じゃないでしょうに。
圧倒的クオリティのライブシーンに比べ音楽が……
全編3DCGということで、CG嫌いの人が暴れているようですが、その点は全く気になりませんでした。むしろ、今あのレベルに匹敵する手描きをやろうと思ったら、多分人手も予算も足りない……。
流石は世界のポリゴンピクチュアです。私服や衣装のパターンが多かったのも好印象。
反面、角度によってキャラの顔が微妙(特に甘奈)だったり*1、日常シーンの構図がワンパターンだったのが残念でした。
特に、間に困るとアイドル全員の顔を数秒ずつ大写しにして時間を稼ぐ演出は最悪でした。
その一分くらいで他に描けるものがあるのでは。
ライブシーンは、第一章の時点ではまだCG臭さが残っていたものの、第三章になると現実のライブからのフィードバックも散見され、動き・演出共にかなりのクオリティに。
一人一人の動きにきちんと個性もあり、恐らくは現実のライブを相当に研究して作られたことが分かります。
その点は99/100点くらい。
ただ……やはり曲数の少なさが気になりました。
各ユニット概ね二曲ずつ+全体曲二つ+α。……あれ? 下手すると1stライブより少なくね?
特に残念だったのが、それぞれの当番回のED曲が、デビュー曲のインストバージョンだったこと。
アイマス伝統よろしく、EDには歌モノを持ってくるとばかり思っていましたが。それこそ、B面曲の使い所だったのでは? とも。
他のアイマス作品との差別化でも意識したのかもですが……なんというか、本作はファンサービスの方向性が虹の行方不明……。
透明感と言えば聞こえはいいが……
本作には常に「透明感」を感じさせる映像や演出が散見された。それは恐らく、原作にもある間や行間を意識した仕草やSEの再現だったのだろうが……ちょっと待ってほしい。
原作ゲームではシステム上、
- プロデュースシナリオや個別Pカードのシナリオ
- 各イベントのシナリオ
- Sカードのユニットシナリオ
という情報を、多くのプロデューサー(プレイヤー)が経験した上で、仕草であるとか表情であるとか行間であるとか、そういったものの意味を感じ取ったり考察したり出来る。
ようはキャラクターの骨格が提示された上で、P(プレイヤー)は様々な深読みや妄想を出来る訳だ。シャニマスの二次創作が度々SNSでバズって、公式と誤解される所以もそこにあると思う。
キャラの骨格なり土台なりをP達が共通認識として持っているから、二次創作でのキャラもあまりぶれない訳だ。
しかしながら、今回のアニメでは圧倒的に情報量が少ない。
例えば、原作では私の担当は杜野凛世なのですが、彼女についての重要な情報である
- Pにスカウトされて地方の名家から上京してきた
- Pに対して純粋な恋心を向けているが、一歩引いているので全く伝わらない
- 大人しそうに見えて、実は積極的な面も。ユニットではサポート役
みたいな属性が、あらまあ驚いたことに殆ど描写されない。
これは他のキャラについても同様で、甘奈のヤバイシスコン振りだとか、千雪の前職だとか、咲耶の犬属性だとか……驚くほどに描写されない。
ようは、彼女達のキャラクターを形作る骨格部分が作中で殆ど提示されていない。
「原作で提示されてるからいらないでしょ?」とでも思ったのかもしれないが、アニメは原作と地続きであるように描かれておらず、あからさまに異なる世界線であるので*2「誰やお前?」となりかねない構成だった。
この点、監督のまんきゅう氏も脚本の加藤氏も、原作研究に余念がない方々なので、意図的に外したor理解が浅かったということは考えにくく……。
上記のストーリーの密度の薄さを鑑みても、何故ほんの少しでも良いのでキャラの個別エピソードを入れなかったのか?と疑問が湧いてきてしまった。
アニメ本編以外でも不満が
また、第2章の上映初日には、散々宣伝していた原作ゲームのチェックイン機能が使えず、夕方近くまで復旧しなかったのに一切の補填が無かったという、アニメ公開に水を差す出来事も。
この件は、何名かの方が公式に問い合わせたのですが、「補填無し」「あるわけないだろ」くらいの対応を受けた模様。
お詫びについてもX上のコメントだけで、ゲーム側でのお詫び文はないも同然。ユーザーを舐め腐っていたとしか思えない……。
【お詫び】
— アイドルマスター シャイニーカラーズ公式 (@imassc_official) November 24, 2023
ただいま、「シャニアニ×シャニマス 劇場連動チェックインキャンペーン」において、
ホーム画面でチェックイン機能利用ページへのバッジが表示されないことを確認しています。
ただいま状況の確認を行っております。
この度はご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ございません。
結局のところ、シャイニーカラーズというブランド自体が「不具合があろうがアニメの出来がアレだろうが、おまえらは俺についてくればいいんだよ」みたいな俺様になりつつあるのではないか、と不安になってしまった。
シャニソンも、私はコツコツ続けていて課金もしているが、目に見えてユーザーが減ってしまっている。
そしてこのシャニアニの、ごくごく特定の層しか喜ばないような薄味。
これらが表すものは、一体なんだろうか? せっかくコンテンツとしては人気があるのに、様々な「やらかし」が足を引っ張っているように見受けられる。
それともそう思ってしまうのは、冒頭に上げたように私がロートルであり彼らのターゲットの中に含まれていないからだろうか?
アニメ「アイドルマスター シャイニーカラーズ」が描いたものが「おわりのはじまり」ではなく、「新しいはじまり」であったことを願うばかり。
おまけ
#シャニアニネタバレ感想
— スミダ@たこわさ (@sumidanger) January 27, 2024
上記記事、もっと端的な言葉で表すと、
「全然素性知らない女子高の部活動の様子を半年間分くらい、ノーナレーションで延々と流し続けた映像作品を楽しいと思えるか否か?」ってところに尽きると思います。
シャニアニって、なんかそういう作品だと思いました。