たこわさ

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劇場版「Fate/Grand Order 神聖円卓領域キャメロット 後編 Paladin; Agateram」の感想みたいなもの

はい、という訳で非常に今更ですが、去る6/5に行われたトークイベント付き上映を観ていました。

anime.fate-go.jp


多分、そちらの感想やら映画自体の冴えた考察やらは他の方がやってると思うので、私は毎度の如く好き勝手に感想的な何かを書き散らしておきたいと思います。

こちらは前編の円盤



――下でつらつらと書きましたが、一言で言えば「絶対に映画館で観ろ」という感じの作品でした。

(以下ネタバレ含む)

後編は、前編とは大きく異なる意欲作となった

前編については、なんとも「惜しい」作品だった印象。
脚本は決して悪くないものの、あまりにもロードムービー然とした雰囲気を重視してしまった為、多くのFGOファンの求めるモノとは異なる代物が出来上がってしまった。
私的には嫌いじゃないが、あれでファンの心をつかむのは難しいだろう。言ってみれば、ファンは外連味を求めていたのに優等生を目指してしまった、と言った感じか。*1

そこに来て、この後編。
こいつはハッキリ言って「問題児」だった。モーさんか貴様は、と言った感じだ。

FGOの魅力の一つは英霊同士の超人バトルにあると思うが、後編はそれを見事に映像表現として描き切っていた。
バトルごとに異なる演出、作画方針が打ち出されたらしく、同じ映画を見ているはずなのに、度々違うアクション作品を観ているかのような感覚に襲われた。

序盤のマシュ対ランスロット等はややギャグよりで「なんぞこれ」と思わせてくれたが、そこからはもう地獄のような戦闘が延々と続く。

動く大規模破壊兵器かのようなガウェインの大立ち回り。
そのガウェインのトラウマを抉る「山の翁」による精神攻撃(というか試練)。
静と動、生と死の純粋なやり取りであるトリスタン対ハサン。
「スクライドかよ!」と叫びそうになった、ベディヴィエールとガウェインの「忠義」のぶつかり合い。
通常のアニメーションの枠を超えて、観念同士がぶつかり合うかのような外連味溢れる作画のオンパレードだったアグラヴェイン対ランスロット。

それぞれのシーンが「担当が好き勝手に作りました!」という最高オブ最高な矜持を感じた。

また、本作では意図的に手描き部分が多く採用されていたようだが……途中で「それ、原画じゃなくて中割りなんじゃ?」みたいな崩壊っぷりを見せる構図も度々登場した。
崩れ落ちる瓦礫の陰影が殆どなく、豆腐みたいな何かが大量に落下するシーンもあった。
それでも「作画崩壊」という印象を受けなかったのは、恐らく本作が徹頭徹尾完璧で一点の曇りもない作画ではなく、あくまでも演出優先、魅せたい部分優先で作られた作品であることが、これ以上なく観客に伝わるような完成度を誇っていたからだと思う。

――まあ、しれっと円盤で直っている可能性もあるがw

あくまでベディヴィエール、そして円卓の物語として

今回の主役はあくまでもベディヴィエールであり、藤丸とマシュは「協力者」と言った感じだった。
だからなのか、獅子王の前で宝具を解放した際のマシュの大切な台詞がカットされてしまっていて、そこは少し残念だった。
それとも原作第二部の内容に配慮して、「見ててください所長」を削ってしまったのか……。

ただし、だからと言って本作のシナリオが原作に劣っていた訳では無い。
むしろ、ベディヴィエールと円卓の騎士の物語として、彼らの内面をきっちりと描き切った感があった。

主役であるベディヴィエールをはじめとして、原作では断片的にしか語られなかった円卓の騎士たちの苦悩がありありつ伝わる場面にきちんと時間が割かれていて、「そうそうこういうのを見たかったのだ」と思わず膝を打った(比喩表現)。

特に、山の翁によって自らの罪を見せつけられたガウェインのシーンは……。
ああいった形でガレスが映像化を果たすとは思わなかった(苦笑)。

アニメオリジナルとなった三蔵対モードレッドのシーンも素晴らしかった。
原作では、他の章で活躍していた故か、モードレッドの扱いがやや寂しい感じもあったが、短い中できっちりとFate世界におけるモードレッドというキャラクターを愛するファンたちを満足させるような演出がなされていて、「分かってるぅ!」と言った感じ。

そして何と言っても、原作でも驚かされたアグラヴェインの見せ場……あれをきっちりと描いた上で、獅子王の、ベディヴィエールの成した諸々は無駄ではなかったのだと、円卓の騎士たちの嘆きや苦しみは無為ではなかったのだと〆てくれた手腕には感謝しかない。

本作は、脚本、演出、作画、音楽、そして何より声優さん達の演技が極めて高いレベルに仕上がっており、近年観た映画の中でもかなりの出来だった。
もちろん、上記のように演出なのか作画崩壊なのか測りかねる部分もあるにはあったが、それを差し引いても「日本のアニメはまだここまでやれる」と感じさせてくれる作品だった。

惜しむらくは、後編のこの出来の良さによって、前編がまたもや風評被害を受けることになった……という点だが、そこについては先日「竹箒日記」で奈須きのこ氏がフォローしていたので、(消えているかもしれないが)全編に良い印象を持ってない方は、是非とも読んでみて欲しい。


主題歌もいいぞ……。
「透明」(『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編Paladin; Agateram』主題歌)

*1:私は戦闘シーン以外は嫌いではなかった。