たこわさ

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蟲師 続章 第三話「雪の下」感想

(以下ネタバレ)
とある雪深い山村を訪れたギンコ。雪に潜む蟲を観察していた所、宿の娘・妙が興味を持ってきた。様々な蟲について話す中、「生き物に寄生し、まるでその者の周囲にだけ雪が降っているようになる蟲」について、妙は心当たりがあると言い――。

宿主の体温を著しく低くし、少しの温かさでも「熱い」と感じるようにしてしまう蟲。ほんの少しの不注意から妹を失ってしまったトキの身にそれが宿ったのは偶然ではなく、悲しみのあまり心を凍らせた彼に蟲が引き寄せられたから、と考えるのは穿ちすぎだろうか。
蟲に取り付かれた事で寒さも冷たさも感じず、温もりは苦痛になってしまうトキに訪れた変化は、身体的なものだけではなく、まるで感情さえも冷え切ってしまったかのような無表情・無感情ぶり。
しかし、その無感情と低い体温が氷に閉ざされた湖の中にあっても――恐らくは一種の冷凍睡眠状態の賜物か――彼の命を繋ぎ止めた事はある種、皮肉めいている。
そして、彼が妹の死の悲しみと蟲との呪縛から解き放たれたきっかけが、今生きている人間の危機――まるで妹の最期の時のように氷を踏み抜き湖に沈もうとする妙の姿からだという、ある種の人間賛歌的結末から感じる余韻は、雪の中から感じる不思議な温かさにも似ていて絶妙。