舞城王太郎「世界は密室でできている」

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

小説は（基本的に）文庫落ちしてから読む、というポリシーだか意固地だかよく分らない性質を持っている私にとっては、２回目の舞城作品との遭遇。
相変わらず体裁が無茶苦茶で、相変わらず展開が早回し。そして、相変わらずアホ面白かったですわ。後の一部作品の悪評を聞いているので、ここで舞城を読むのを止めてしまおうかと思うほどに。
舞城作品は、おそらくその無茶苦茶な文章とノリで読む事を諦められたり、「こんなもん小説じゃない」とか酷評されたりする事が多いと思うけれども、そういう評価を下している連中は本当に損をしていると思う。文章は暴力的で、内容もかなり破天荒だけれども、（少なくとも本作は）紛れも無い「青春小説」に他ならない。しかも、一級品の。「見た目」で小説の面白さを判断してしまう事の愚かさを、改めて認識させてくれる作品ですよ。
本作を読んでいて最も心地よかったのは、「煙か土か食い物」にも共通している事だけど、「愛」が物語の根底として描かれている点。しかも、押し付けがましかったり変に美化していない「素」の「愛」が。登場人物が偉そうに或いはイジイジしながら能書きたれて「愛」を語るような作品ばかり書いている駄作家どもにも見習ってもらいたいものです。