たこわさ

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波乱の個人戦開幕「ちはやふる 32」感想

ちはやふる(32) (BE LOVE KC)

ちはやふる(32) (BE LOVE KC)

数日の間、本屋に寄っていなかったのですっかり買い逃していました……。
(以下ネタバレ)

あらすじまとめ

  • 3位決定戦は瑞沢の勝利
  • 勝戦はヒョロ君vs理音の運命戦になり、ヒョロ君がみるみる衰弱するも太一の姿に気づき奮起、見事に勝負を制し北央が優勝
  • 新、たまらず太一に掴みかかり「お前がいなかったせいで千早が主将としてしかかるたが出来なかった」と責める。
  • 太一と新のやり取りを見ていた千早達、瑞沢の二年三年は感極まって太一に抱きつき号泣。太一不在のまま三年生の夏が終わってしまった事に涙する。
  • 太一、再び黙っていなくなるが、新を通じて千早達に「次は(かるたの)試合で」と伝言を残す。
    • 何かを得た太一は再び名人のもとに戻り吹っ切れたような表情。
  • 個人戦が始まる。詩暢は袴姿で気合を入れていて、触発されたかなちゃんは千早に自分の袴を着てもらおうとするが断られ、自分の浅はかさを恥じた後、自ら袴姿となって試合に挑む。
  • 詩暢と千早の対戦。詩暢は自分が勝った事のない新に勝利した千早に闘志むき出し。千早も食い下がるが大差で敗北。
    • 「次はクイーン戦で」という千早の言葉に嬉しさを隠し切れない詩暢。

感想

Amazonなどのレビューが荒れているようですが、太一が「やらかした」時とは逆に、新が縁の下の力持ち役を引き受け太一がクローズアップされた事で、一部の「新厨」が暴れているのが殆どな様子。「新を落として太一を上げた」などと的はずれな批判をしている方がいますが、むしろここ何巻かは新の成長物語であり、千早達が太一に本音をぶつけられたのも新が率先して苦言を呈してくれたからなので、これ以上ない「新上げ」な巻であったと断言しておきます。

――とは言え、「主将として戦ったから千早が新に勝った、というのはなんともご都合主義」ですとか「努力の人であり逃げない人であった太一をどうしようもないヘタレにしておいてから、今度は都合よく持ち上げている」という方の意見はわかる気もします。千早という暴走特急のせいで新と太一が不当に貶められたような気は確かにしましたからね……。ちょっとこの辺り、作者氏の頭の中にあった話の流れを上手く漫画に落とし込めていないのでは? と感じました。私は太一派でしたから太一が暴走した時も擁護出来ましたし、新の成長ぶりを好ましくも思いましたから彼が縁の下の力持ちを演じる様も微笑ましく思えましたが、そこのところを読み取れない人も出てくるような描き方をしているな、とも同時に感じましたし。この辺りは、作者さんも産みの苦しみがあったのだろうとは想像できますので、あまり責めるべきでないとも思いますが。
ここ最近の展開を「下手くそな恋愛劇」と表現している方もいるようですが……今巻を読んだ方は、千早達が「恋愛」になどうつつを抜かしていないことはおわかりかと思います。彼女らが見ているのはもう「かるた」だけですからね。

それに、今巻の主役はむしろ千早達三人というよりも、ヒョロ君と詩暢の二人だったと思います。
ヒョロ君は長きに渡る努力が報われ、遂に「全国優勝校の主将」という栄誉を手に入れました。しかも、最後の最後に自ら運命戦を制すというこれ以上ない形での勝利で! 「同志」である太一の存在が彼を奮起させたというのも泣けますね。太一もヒョロ君の姿から多くのものを得られたのではないでしょうか?
詩暢については「初めてのプロになる」という決意のもと、強い意志で大会に臨みましたが……新の敗北を知った事、そして千早という「なんだか気になる相手」を得た事で、次なる強さを手に入れたようです。「相手がいてこそ」のかるたなのに、詩暢は今まで「一人」でかるたをしてきました。だから、「意識してしまう相手」=新に勝てなかった。意識してしまえば、自分のペースを守れないから……。しかし今回、千早という相手をこれ以上なく意識しつつも詩暢は見事に勝ってみせ、その強さを証明しました。彼女はもう、以前の彼女ではなくなっているのかもしれません――が、新にはまたあっさり負けちゃったりして(笑)。
やはり詩暢が新の事を意識する理由って、「好敵手」と認めてしまっている+無意識な恋心(or友情)だったりするんでしょうか? 二人の対戦も気になります。