たこわさ

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久々の続刊「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 12」感想

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。12 (ガガガ文庫 わ)


なんと2年ぶりの新刊。
ラノベによくある「作者が締め方分からなくなって、強引に予め決めておいた結末に繋げて作品全体が台無しに」なパターンになるのでは? と戦々恐々としていましたが、どうやらそれは杞憂に終わったようです。

(以下ネタバレ含む)

場面はバレンタインのあの日からそのまま再開。
関係が変わり始め、今まで通りの関係ではいられなくなった八幡、雪乃、結衣の三人が、それを受け入れることを決めたあの時から。

プロットは相変わらずの出来で、物語としての軸はぶれておらず、二年間のブランクを感じさせませんでした。
ただ、作中のパロディやSNSに対する描写を見るに、実際に書き上げたのはつい最近、という印象を受けました。

刊行ペースが遅くなったのは、キャラクター達の心は決まっており、その結果どんな展開になるのかは既に見えていたが、それを彼らの日常に落とし込むこと――あるいは心情を赤裸々すぎないように描くことに苦心したからでは? と妄想。

描きかったことは本当に単純で、

  • 雪乃の自立
  • 結衣の諦め
  • 八幡が自分の心に正直になること

の三つだったと思うのですが、それを小説としてどのように魅力的に描くのか、苦心の跡が多かったように見受けられます。

「ガハマさん派」の私としては、結衣が完璧に「諦めている」ことが悲しくて仕方ありませんでした。
彼女は自分自身の行動を極めて利己的なものだと認識しているようですが……実は、八幡に負けず劣らず「自己犠牲」なんですよね……過程ではなく、結果が。


ただ実は、恋愛感情という点に絞ってみれば、八幡の気持ちが誰に向いているのかは、まだ決定的には分からないんですよね。
11巻で結衣から「いつか二人きりでランドへ」という約束を反故にされてもなお、八幡は正体不明の衝動に突き動かされて結衣へ一歩、また一歩と踏み込もうとしている。
一方、雪乃への想いも並々ならぬものがあり、陽乃に「共依存」を指摘されてもなお、論理もへったくれもない理由付けをして、彼女を助けようと駆け出した。

結局八幡自身も、結衣や雪乃、それぞれに向けている自分の感情の正体が分かっていないのだろうな、と。
その辺りに決着が付くときが、本作が完結する時……といったところでしょうか?

次巻発売がいつになるのかはまだ発表されていないようですが……気長に待ちたいと思います。