たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などのレビュー・感想・情報を中心にお送りする雑多ブログ。

あきまん「ターンエーガンダム 月の風」

ターンエーガンダム 月の風

ターンエーガンダム 月の風

連載開始に驚かされ、突然の連載中止に二度驚かされた本作が、加筆修正されて無事単行本となったことは、一応喜ばしい。
(以下ネタバレ)
さて、イラストレーターやアニメーターが漫画の筆を取る事は、最近ではそれほど珍しいことではないとはいえ、アニメやゲームのキャラクターデザイナーがそのままその作品の(外伝とはいえ)コミカライズを担当する例というのは、実はあまり多くない*1
さらに言えば、漫画的な絵柄の絵師だからといって、そのまま漫画が巧いとは限らない。あくまでイラストレーターはイラストを描きなんだ、という事を痛感させられることも少なくない。
そういった意味で言うと、あきまんこと安田朗氏は、そういったイラストレーターの典型だった、という事になるだろう。一部コミカルな演出などには、さすがに非凡なところを感じるが、構図も構成も漫画としてはあまりよろしくない出来といえるだろう。キングゲイナーのキャラクターデザインを担当し、コミカライズも担当している中村嘉宏氏がその両方で非凡さを発揮しているのとは対照的かもしれない。
しかしながら、本作の魅力は漫画的な巧さとは別の所にある。
アニメ本編ではあまり時間を割かれなかった∀ガンダムのさまざまな設定、特にムーンレイスがどのような遍歴を経て月に定住することになったのか、外宇宙へ旅立ったニュータイプたちはどうなったのか、など、重要設定であるにも関わらず(おそらくあえて)語られなかった部分に新たな解釈を交えつつ描いたのが本作だといえる。
そういった独自のアレンジに難色を示すファンもいるかもしれないが、作品冒頭でわざわざ黒歴史の中に「コズミック・イラ」を含めて表現している所を見れば、安田氏がいかに∀ガンダムという作品の本質を理解しているかをうかがい知る事が出来るだろう

*1:あくまでそういったメディアミックス作品の中においての割合としては多くない、という意味で