たこわさ

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小手川ゆあ「死刑囚042」4巻

死刑囚042 (4) (ヤングジャンプ・コミックス)
どうにも最近の漫画やアニメは、「シリアス」である事と「残酷」である事の区別の付いていない、勘違いした作品*1が多すぎると思う。人が死ねば悲しいのか? 残酷な描写をすればリアリティがあるのか? それは結局の所「死」を記号として強調しているだけなのではないのか? 等など、疑問を感じてやみません。
本作はシリアスな所はとことんシリアスで、でもお気楽な所はとことんお気楽に、そして「人が死ぬから悲しい」のではなく、「何故悲しいのか」という部分から逃げないで、丁寧に描いていると思う。
作品の初期エピソードで田嶋の運命は既に明示されている。彼には、一般的な意味での「幸せな未来」は待っていない。では、田嶋に「幸せ」は訪れないのか? といえば、必ずしもそうとは言えない。
この巻では田嶋が大切な人を失う恐ろしさを実感するエピソードと、残酷な現実を突きつけられるエピソード、そして「誰かのために何かをする」という気持ちを抱くエピソードが描かれている。
「失う恐ろしさ」があるという事は、かけがえの無いものがあるという事。残酷な現実を受けても、田嶋は優しい言葉を相手にかける事が出来た。「誰かのため」に行動した田嶋を応援してくれたのは、予期せぬ人々の存在だった。
死を宣告された人間は、幸せにはなれないのか? なれないという人がいるのなら、生まれた時から不定期の「死」を宣告されている我々は一体何だというのだろう? と問いたい。「死」は確かに終局だが、その前には「生」があり、僅かかも知れないが「希望」は確かにそこに存在するのだ。

*1:種とかアニメ版ハガレンとか