たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などのレビュー・感想・情報を中心にお送りする雑多ブログ。

最終巻「高杉さん家のおべんとう 10」感想

「おべんとうが繋ぐ物語」もいよいよ完結。私的には、期待したものに近い結末でした。同時発売の「高杉さん家のおべんとう メモリアル」も非常においしい「デザート」でございました。
(以下ネタバレ含みます)


天涯孤独の31歳崖っぷちオーバードクターな青年・高杉温巳が、行方知れずだった叔母・美哉の遺した一粒種である12歳の無口な少女・久留里を引き取った事から始まったこのお話。ぎこちなく生活空間・時間も異なる二人が手作りの「おべんとう」を共有する事によって静かに、少しずつ、しかし着実にその絆を深めていくその様子を色々な意味でハラハラしながら見守ってきましたが……まずまず、というかほぼ完ぺきに近い形でのハッピーエンドとなったと思います。
温巳のフランスへの栄転と自分の大学進学という転機を前に、ずっと抱えて来た温巳への恋心をきちんと、真っ直ぐな言葉で伝えることを選んだ久留里。対する温巳は、持ち前のヘタレさと長年染みついた保護者根性からお茶を濁すという間違いを犯してしまいましたが……最終的には久留里の想いにも自分の気持ちにも正直になれて良かったね、と思ったらなんとフランス留学の四年間ずっと直接会えずにいたという安定の温巳クオリティ(笑)。
十巻かけてしっかり描かれてきた久留里の想いとその決断。「保護者」から「家族」へと次第に変化していった温巳の気持ち。最終巻だけ読むとハル君チョロ過ぎ―とか思ってしまいそうですが(笑)、結局のところ温巳にとっての最優先はずっと久留里なんですよね。小坂さんに振られた理由もそうでしたが、どんな形にせよ、温巳の描く未来予想図の中心にはいつも久留里がいた。それが、久留里の成長や高遠という「実の父親」の出現によって次第に形を確かにしていった……その結果としては、温巳の選択は実に自然なものだったのではないでしょうか?*1

温巳が四年間で急激に大成していったり、照れ屋の久留里がアナウンサーという意外な職業を選んだり、最後まで色々と楽しませてくれました。本編が終わっても二人は中学生レベルの恋愛をしばらく続けそうですが(笑)……まあまあ明るい未来が待っていると信じつつ、物語の余韻に浸りたいと思います。

このカバー絵の仕掛けが、私的にはとてもニヤニヤ出来る要素でした。

*1:「メモリアル」での作者インタビューによると久留里が中学を卒業する辺りまではこの結末を決めていなかったとの事。逆に考えると、その辺りからの全ての出来事がこの結末への伏線だった、と言えるかも。