たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などの感想を中心にお送りする雑多ブログ。

驚愕の石田彰三重奏、だけじゃない「PERSONA3 THE MOVIE ― #3 Falling Down ―」感想

非常に、非常に良い出来でした。
石田彰さんの一人三役(しかもキャラ同士の絡み多し)が凄まじかったのですが、それよりも――。
(以下ネタバレ)
――チドリィィィィィィ!! (ノД`)・゜・。
の一言に尽きる、というのが本作の印象。こんなの絶対おかしいよ!
失う事を恐れるあまり他人との関係を深めようとしない主人公・理。親しくなればなるほど失った時のショックは大きい――だから誰とも親しくならない、親しくしない。だけれども彼に親しく接しようとする人々、そして理との距離を詰めようと躍起になる転校生・綾時の存在が、次第に彼の態度を軟化させていく。
その最後の一押しが順平とチドリの悲恋だった訳ですが……あまりにも、あまりにも悲劇的過ぎて、記憶の戻ったアイギスの口から語られる衝撃(?)の真実だとか非常に気になる所で終わった事とか、色々咀嚼できないまま観賞を終えてしまいました。

元来、私は人が死ぬ作品、特に過剰に悲劇的なシチュエーションが添えられたそれが好きではありません。人間の死というのはそもそもそれ自体が悲しい事で、それを感動*1を煽る為に装飾するのが大嫌いです。
でも、それでもやっぱり泣かされてしまう、問答無用で心を打ちのめされてしまう物語や演出が存在するのは確かで、本作はまさにそれに当たるものでした

特別課外活動部の中でも特殊な事情もなく、ペルソナ能力や戦闘力も並だった順平。当初は理に対しても嫉妬心が先行してしまいましたが、場数を踏む事で成長を重ねていきました。彼は確かに突出した才能を持っていませんでしたが、普通の、普通に善良で普通に優しく普通に頑張れる人でした。特殊すぎる事情を抱えた部員の中における、ある種の常識の体現とも言えるでしょう。
そんな彼が偶然に出会った少女・チドリ。奇抜な恰好、素っ気ない態度、でもどこか放っておけない彼女。もちろん下心もありましたが、普通に優しい彼は普通に彼女の世話を焼いて、そのうち頑ななチドリの心を溶かしていった。例え彼女が自分達と敵対する存在でも、彼女自身が自分を拒絶しても、彼女の中にある本当の心を知っている彼は、それでも彼女のそばにいようと一歩踏み込む。
チドリが抱えている問題、死をも恐れない彼女が唯一耐えきれないもの、それは理と同じように大切な存在が出来たとしてその人を失ってしまった時に感じるであろう悲しみ。天涯孤独な上に大人達の勝手な研究の材料にされ長くは生きられないという事実に、虚無が支配していた彼女の心。そんな彼女が知ってしまった順平の純粋な優しさ、温もり。それを失う事に耐えきれなかった彼女は、再びストレガに戻ってしまう。
それでも、それでも順平は彼女を助けるために体を張る。拒絶されようと、殺されかけようと、チドリを諦めない。そんな順平だからこそ、チドリを「こちら側」に引き戻すことが出来た。
――しかし、そんな彼らに撃ち込まれた一発の銃弾。タカヤが放ったそれは順平の胸を貫き、絶命。ずっとそばにいると約束してくれた順平が目の前で冷たくなっていく事実に打ちのめされそうになるチドリでしたが、彼女はもう絶望しない、順平がくれた温もりがあるから。だから、彼女は自分の「生命を分け与える力」で順平の命を救い、自らは果てた。順平の命、鼓動となって彼とずっとそばに居られる、そんなささやかな喜びと共に。

本当に、本当にささやかな幸せを、自分の傍にいてくれる人を見付けたその直後に死ななければならなかったチドリ。彼女は満足して逝きましたし、順平も悲しいけれども、悲しくて仕方がないけれども彼女と出会った事だけは決して後悔しない。その姿は理にとってまさに福音だった。

分かる。分かりますけど、それでもやっぱりチドリと順平には幸せになってほしかった……。今まで報われなかった人にこそ、人並みの幸せを掴んでほしかった。順平の慟哭と共に、劇場にいるにも拘らず危うく両眼からペルソナを召喚するところでした。

ペルソナ4(のアニメ)が、シリアスな場面こそあれ基本的にコメディ路線だったのに対し*2、本作は実に心をえぐる物語です。「例え大切な存在を失っても、その人との絆の全てが失われるわけではない」、理が得たその答えが、この物語の行く末を暗示しているのであれば、きっとそこに待ち受けているのはハッピーエンドではなく苦い結末。完結編である#4を心して待ちたいと思います。

#1と#2のBDも欲しくなるほど。

*1:ポジティブな意味ではなく悲しさのあまり泣いてしまうような類のそれ。

*2:陽介は憧れの先輩と死別していますが、彼の場合一方的な好意を寄せていただけなのでそこまで悲劇という訳ではなく。むしろピエロ(コラ