たこわさ

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うしおととら 第四話「とら街へゆく」感想

今回の満足度:5点(5点満点中)
(以下ネタバレ)

あらすじ

とある工事現場で「要石」と呼ばれる古い巨石を撤去する作業が進んでいた。その「要石」は明治時代にとある化け物を封じたものであり、その言い伝えを知る老人は必死に工事を止めようとするが、当然の事ながら作業員達は老人の話など信じず工事を進めてしまう。しかし「要石」を吊り上げた結果、老人の言葉通り封じられていた化け物「餓眠様」達が目覚め作業員達を食い殺してしまう。
翌日、そのニュースを見た潮は、とらがその事件を起こしたと思い込みとらを責めるが、とらには身に覚えが無く「自分の仕業ではない」と主張する。しかし、それでも全く聞く耳を持たない潮に腹を立て街の方へと飛び去ってしまう。
とらへの疑念を募らせる潮は、まずは状況を把握する為に事件の起こった工事現場の様子を見に行くが、そこで工事を止めようとしていた老人と出会い、事件が「餓眠様」という化け物の仕業である事を知る。老人は自分の持っていた資料を見せ、明治時代にとある霊能力者の女性が「餓眠様」を封じた経緯を潮に語る。事件がとらの仕業ではないと気付いた潮だったが、彼の目はそれよりももっと驚くべきものを資料の中に見出していた。「餓眠様」を封じたという霊能力者の写真――そこにある姿は潮の同級生・真由子に瓜二つだった。老人によれば「餓眠様」は霊能力者への深い恨みを抱き彼女を探しに飛び立ったという。もし真由子が彼らに見つかれば――。

感想

今までのエピソードにおいては化け物による死者はほぼ皆無だったのに対し、今回は大量と言ってもいい人々が「餓眠様」によって殺戮された。今まではギリギリのところで人々を救って来た潮だが、いくら強力な「獣の槍」を持つ彼でも「起こってしまった事」はどうにもならない。だがそれでも恐らく、自分に何か出来る事はあったのではないか? と考えてしまうのが潮という少年であり、そんな彼のやり場のない怒りが今回のとらに対する理不尽とも言える決め付けに繋がったのではないだろうか?
しかし濡れ衣を着せられ怒りのあまり飛び出していったとらの姿を見ていると、まるで二人が「一方的にありもしない不倫の疑いをかけてくる伴侶に激怒し家を飛び出す夫婦の片割れ」のような状況を演じているようにもみえ、何だかんだ言いつつも良いコンビになりつつある二人の関係性を如実に表しているようにも見える。

今回ヒロイン役を担った真由子については、当初こそ化け物に襲われるという非日常すぎる恐怖に震えていたが、それでも必死に自分を奮い立たせ竦む足にムチ打ち逃げ延びようと走り続けるそのガッツに、彼女の芯の強さが感じられる。そして自分が一番危険なのに、咄嗟に他の人々の安全を優先できてしまうその真なる優しさも実に魅力的。自分を食い物呼ばわりするとらに対しての優しい態度をみるに、人を見る目も確かなよう。そして美少女設定であるという……ヒロイン力という点では既に麻子の遥か上を行っている、というのは流石に失礼か。なお、原作の時点では私は比類なき真由子派であったことを余談ながら書き加えておく。

しかし、目覚めたばかりの「餓眠様」達が人々を大量に食い殺したのに対し、目覚めてからそれなりの時間が経っているのにとらが未だに人を喰えていないという対比構造がなんとも皮肉めいている。喰う喰う言いながらも、つい情にほだされて潮を助けてしまったり、(傍に潮がいたとはいえ)「極上の食い物」であるはずの真由子から「おいしいよ」とハンバーガーを渡されてきょとんとしてしまったりするところに、とらの本当の人となりと彼が何故いつまで経っても人を喰うことが出来ないのか、その理由が如実に表れているのかもしれない。
そして「餓眠様」など問題ならない位に恐ろしく強いとらがコメディリリーフとしての役も担っているというギャップが、実に不思議な魅力をとらに与えている。更に彼には「ツンデレ」という属性が既に与えられている。そのうち「とらかわいいよとら」等と言われる日が来るのかもしれない。割と本気で。