原作プレイ済み。ディーン版及びFate/Zero視聴済み。原作ネタバレにならない程度で補足説明など交えて。
(以下ネタバレ)
あらすじ
キャスターに囚われた士郎を救ったのは意外にもアーチャーだった。策士のキャスター相手に、次々にその手の内――アサシンはキャスターが召喚した偽りのサーヴァントであること。街の人々から魔力を吸い上げているのはキャスターの独断でマスターのあずかり知らぬ所であること――を見破ったアーチャー。更には、キャスターの「陣地」であり全てが彼女の有利に運ぶはずの龍洞寺内で、アーチャーはキャスターを圧倒する戦いを繰り広げ、遂にはキャスターを撃退する。
しかし、アーチャーはキャスターにとどめを刺さず見逃してしまう。たまらず食って掛かる士郎だったが、アーチャーは戦略上キャスターにはバーサーカーを倒してもらうのが筋でありその為ならば街の人々にもこのまま魔力を吸われ続けてくれた方が上策だ、とまで言い捨てる。
決定的に自分とは方針の異なるアーチャーを捨て置き、キャスターの後を追おうとする士郎だったが、その時アーチャーの凶刃が士郎を――。
感想
「さらばだ。――理想を抱いて溺死しろ!」
キャーアーチャーさん素敵―抱いて―!! という感じの悪漢振りでございました。絶対的に不利なはずの敵陣内でも、それを圧倒する戦いぶりを見せつけ、しかも戦略上の理由から敵にとどめを刺す事には拘らないというクール振り! それでいて、士郎とは水と油のようでありながらもその実、根本的な所では似た者同士である事をキャスターに看破された際に見せたような子供っぽい一面もあるというアンビバレンツな魅力がたまりません。
また、小次郎アサシンのイケメン振りも見逃せません。キャスターに召喚された偽りの英霊である彼には、強力な魔力も宝具もない。それにも拘わらず、ただ剣術の技量のみでセイバーに伍し、時に圧倒してしまうその愚直なあり方にしびれる憧れる!
しかも必殺技が、ただ己の修練の結果のみで宝具の域に達したという神技って、どこまで格好良ければ気が済むんでしょうか?
おまけにその二人が最後には己の意志に従ってぶつかり合うとか、腐の人じゃなくても思わず垂涎物のシチュエーション。清流が如き純粋な心を持つ漢同士の剣劇、是非ともフルサイズで観てみたかったですね。そりゃあ士郎も重傷の身を忘れて思わず見入ってしまいますわ!
力と技の純粋なぶつかり合いであるセイバーとアサシンの戦い、曲者同士の騙し合いばかし合いながらもアーチャーの清流の如き戦いぶりが最後にそれを制したアーチャー対キャスターの戦い、それぞれ趣は微妙に異なりながらも、どちらも各サーヴァントの個性を色濃く体現したそれでした。
そしてその戦いの中で描かれた士郎とアーチャーの「根本的に同質だからこその水と油」の関係性も絶妙。理想を追い続ける士郎と、現実の中における「正義の味方」を極めたアーチャー、その両者のぶつかり合いが今後も物語の中核を担っていくのだろうなぁ、と期待せざるを得ません。
あと、士郎がアーチャーに反感を抱くのは何も近親憎悪という所だけじゃなくて、彼こそがかつて切嗣が語った「正義の味方」そのものであるから、というところもあるんでしょうね。嫉妬半分、自分の理想を体現した男が諦観に溢れている事への悲しみ半分、といった所か。