たこわさ

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凪のあすから 第12話「優しくなりたい」感想

(以下ネタバレ)
おふねひきで自分がおじょしさまの代わりに舟に乗る事を決めたあかり。そのまま至のもとに嫁ぐ意志を固めた彼女に対し、美海は「光と共に冬眠して生き延びて欲しい」と願ってやまなかった。そんな彼女のもとに、光達の父・灯が訪れ……。
灯とあかり父娘の和解シーンには思わず目頭が熱くなりました。父に反発するだけの――まだ父親に甘えている部分が残る――光に対し、父の苦労も自分達への愛も察する事が出来る境地に達したあかりは、もう一人の立派な女性であり、だからこそ灯は娘の――そして出来れば息子の――意志を尊重したいと願うようになったのでしょうね。
しかし、灯の言葉の中に存在するある矛盾が彼の苦悩を端的に表しているのも事実。地上を襲う災いはまだ遠い先の事、と美海達には言ったものの、自分達の意志とは関係なしに冬眠がやってくる事を誰よりも分かっているのは他ならぬ灯自身な訳で。今はまだその兆候はないものの、もしかするとあかりにも冬眠の影響が出るかも知れず。ただ、彼がわざわざ地上に出て美海にあかりや光を託すかのような発言をしたという事は、何か冬眠を避ける手段があるようにも思われ。

そんな父親の想いを知ってか知らずか、光はますます逞しく成長しているようで。その姿に我知らず「ひーくんはいつの間に男の人になったんだろう」とまなかが呟いてしまうほどに。そんな彼の姿が周りの人々をも動かすわけで、これはもう立派な才能と呼べるでしょうね。そして彼は色々な想いを抱えつつも、紡という友人を頼りに思い、助けを求める事が出来るわけで。人の心の機微を察する天才である紡と人々を動かす情熱を持った光、この二人がいればどんなこんなんでも乗り越えられんじゃ? と思わせてくれる程です。
しかしながら、恐らくはそんな光と紡というまぶしい存在、そして迫り来る冬眠による「別れ」の可能性に焦る人間が一人――要です。
いつも飄々として時に人の心をえぐる一言を放ちながらも、どこかしらで縁の下の力持ちを演じてきた要。彼が、ちさきの光への想いを知りながらも、自分は一歩退いた態度でちさきを見守ってこられたのは、まだまだ自分達には未来があるという計算からだったのでしょうが、「冬眠」という差し迫った危機や、紡という自分と同じかもしくはそれ以上に光達を理解できてしまう存在の登場が、彼の中の焦りを大きくしていった事は想像に難くありません。
多分、もう自分が光やまなか、そして誰よりちさきの為に何かを出来る時間は限られている。そして自分自身のちさきへの想いに決着をつける時間も。そんな気持ちが、彼を突き動かしたのでしょう。恐らくは、「それでも光ならきちんと皆の思いを受け止めてくれる」という信頼もこめて。利己的なようでいて、もたらされるであろう結果は利他的であるという、なんとも要らしい行動だったのではないかな、と。

そしてそんな要の行動が、まなかが自分自身の心と真剣に向き合うきっかけを与えました。
否応なく変わっていく環境、自分達の想い・関係。自分自身がどこにいるのか、どこに行けばいいのか、どこに行きたいのか。それらが分からなくなってしまい、必死に走り、泳ぎ、海面を目指す彼女の心に現れたのは、大漁旗を振る「男の人」となった光の姿――。
果たして彼女の心に現れた光の姿は、どんな意味を持つのか。その答えを教えてくれるのは――あるいは言葉にならないまなかの想いを引き出してくれるのは――出会いの日と同じように彼女を「吊り上げた」紡の役目なのか? 次回も目が離せません。