たこわさ

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銀の匙 Silver Spoon 第1話「エゾノーへ、ようこそ」感想

原作既読。
(以下ネタバレ)
原作での冒頭部分、八軒迷子→回想、という綺麗な流れを何故逆にしてしまったのか、その脚本には疑問を呈したいところですが、全体としては普通によく出来たアニメ、と言った印象。
もちろん、荒川先生独自の軽快さを上手に再現できているか、と問われれば少々疑問符ではあるのですが、それでも卵かけご飯シーンにおける作画の気合の入れようだとか、TVアニメでは厳しいと思われていた鶏を絞める描写を逃げずに真正面からやってのけたりしたスタッフの姿勢には、素直に感嘆したり。
主人公たる八軒とヒロインたる御影ちゃんの中の人が、名作アニメ「輪るピングドラム」のカップルだと言う所も本編の出来とは別のところでポイント高いですね(笑)。もっとも、二人ともきちんとキャラクターにあわせて演技を変えているので、件の二人と声のイメージが重なる事はありませんでしたが。

さて、原作者及び原作漫画のファンとして少し触れておくと、本作は原作者・荒川弘先生の育った環境や学生時代の経験が基になっている部分が多く、そういった意味でよくある「客観視点で得た情報から描かれるお仕事物」とは一線を画した作品となっています。端的に言うと、リアリティが半端ない。
もちろん、漫画的な演出として分かりやすく誇張されて描写されている所も多いわけですが、逆に都会育ちの人間からすれば「とんでもない」と思ってしまうような事も、変に脚色したりせず「ありのままの現実」として描いてくれています。なので、何か作中で酪農関係の事件が発生した場合、その場ではとりあえず問題が解決したとしても、「それで終わり」ではなく「こういった事はこれからの日常で当たり前のように起こる。だから、問題に真摯に向き合い続ける必要がある」という、まさしく生き続ける事そのものへの賛歌ともいえる物語になっています。
そういった、ともすれば説教臭くなるテーマを、少年漫画としての娯楽性を損なわず、かつ八軒という等身大の青年の視点で描いた本作のような漫画が週刊少年誌に連載され、こうしてアニメーションにもなってしまう今の世の中は、そう捨てたものじゃないのかもしれません。

ちなみに、原作者自身の体験をつづった漫画は↓ こちらはギャグ分大目で気楽に楽しめます。

百姓貴族 (1) (ウィングス・コミックス)

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