たこわさ

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氷菓 #16「最後の標的」感想

原作は「氷菓」「愚者のエンドロール」まで読了。
(以下ネタバレ)
文化祭三日目。
怪盗「十文字」の話題は遂に全校に知れ渡る事となり、里志と同じく自ら「現場を押さえて犯人を捕まえてやろう!」と考える面々の数も相対的に増える事になりました。こっそり羽場が再登場しているのは少し笑えました、かませ犬的な意味で。――そして当然の事ながら、現場が張り込まれているところにホイホイと犯人が現れる事も無く、裏をかくように一文字先の「け」に該当する軽音部が標的にされるなど、里志達「探偵」の面々は「犯人」に翻弄されるばかり。
一方、奉太郎の元には、える曰く「どこかで会った事のあるような?」女性――奉太郎の姉が訪れていた。元々彼女が奉太郎に渡した「壊れた万年筆」から「わらしべプロトコル」が始まったので、今回も何やら「種」となるアイテムを携えてきたのかな? と思っていたらまさかの「夕べには骸に」が登場。いや、流石にこれは姉さんデウス・エクス・マキナ過ぎるだろう、と思いつつも、入須の時のように後輩の誰か――今回の場合漫研の部長か河内が怪しい――に頼まれて持ってきた、と考えた方が自然か。
その、「夕べには骸に」は捻くれものの奉太郎をして「良い……」と素直に感嘆せしめる程の名作だったらしく、摩耶花の言葉が証明された形になります。が、それだけではなく、あとがきにまるで「十文字事件」の事を指し示すかのような言葉が綴られている事に奉太郎が気付きます。「クドリャフカの順番」と予告された次回作の題名、奉太郎はまだ知らない筈ですが、共著者の一人が転校してしまったため、その作品が世に出る事は無く、では今回の事件は出せなかった作品の代替行為という事になるのか・・・…?
さて、その頃「夕べから骸に」を必要としている摩耶花はと言えば……摩耶花を目の敵にする部員の一人の「ちょっとしたイタズラ」が思わぬ事故を誘発してしまい、せっかくのコスプレ*1が絵の具まみれに……。ここで唇を噛締め、必死に耐える所に摩耶花というキャラクターの信念のようなものが垣間見えますね。たとえ自分が酷い目にあっても、「相手がわざとやった」のでなければ糾弾しない、まさしくタロットカードの「正義」を思わせる鋼の公正さ。*2
さて、「夕べには骸に」が古典部にもたらされた事で色々と話が動いてきました。奉太郎は「夕べには骸に」の作者の一人が今回の事件に関係している事に思い当たり、摩耶花とえるは同作品の作画担当が現生徒会長である事を突き止めます。一方で、「自分は探偵にはなれない」と気づいてしまったのか、里志の思いつめた表情が痛々しくもあり……。
今回は、起承転結の「転」というよりは「転の半分くらい」と言った方がしっくりくる、「繋ぎ」の回だったように感じました。その為、話にしてもキャラクターの心情にしても、終始落ち着かない雰囲気があり、観ていてもやもやした気分に……。ただその中でも、奉太郎の「卑猥な話」発言にレ●プ目になったり校内放送で緊張してマイクに頭ゴンッ! を素でやってしまうえるの姿が一服の清涼剤になっていたような。

*1:七色いんこ」の「千里万里子」のコスプレ。

*2:ついでに、あれだけ意地悪だった「河内派」の部員達が心底心配そうな眼差しで摩耶花の事を見ていたので、彼女らも心底いがみ合っている訳では無さそうな。