Fate/Zero 第二十五話「Fate/Zero」感想

（以下ネタバレ）
原作及び「Fate/stay night」をプレイ済みの人間には最高の、それ以外の方には説明不足な最終回だったな、という印象。
特に、今回のアニメだけ観ていて切嗣の

――ああ、安心した

が最期の言葉であったという事に気付けた人はどの位いるんだろう？と少々心配になってしまう終わり方。まあ、余計な心配かもしれませんが……。
とはいえ、私的には十分に満足な終わり方ではありました。一応、それぞれの「結末」も描かれてはいたことですし。
聖杯の本質に気付き、セイバーにそれを破壊させた切嗣。だが、既に手遅れだったのかそれとも別の要因か、聖杯の「中身」の一部があふれ出し新都を焼き尽くした……。自らの決断が招いた（と切嗣は思い込んでいる）惨状の中、助け出したたった一つの命――士郎という少年の存在がどれだけ彼の心に救いをもたらした事か。
ここに切嗣という、大を助ける為に小を切り捨て、世界と家族を天秤にかければ迷わず前者を選ぶような「正義の代行者」という在り方は終わりを迎えた訳です。それは間違いなく「救い」であっただろう、と。
セイバーは、結局「間違えたまま」戦いを終え、いつの日かの「滅びの丘」へと舞い戻りました。ランスロットの最期の言葉「貴方に仕えた全ての騎士が思っていた、貴方こそ最高の王であると」に込められた意味、「たとえ滅びの運命を迎えたとしても、アーサー王の在り方は決して間違っていなかった」にも気付かず、彼女はまだ聖杯を欲し続ける……。
雁夜は結局最後まで、自分にとって都合のいい幸福が他人にとってもそうである、と穿き違えたまま逝ってしまいました。文字通り都合のよすぎる幻を見たまま蟲蔵へ沈んでいく彼を、見送る桜の冷たい視線と言葉はまさに「罰」そのものか。
ウェイバー・ベルベットは、ライダーの言葉通り「生きる」事を選択しました。ライダーが残していった数多くの痕跡、それを眺め笑みを浮かべる彼の姿にはかつての弱さは全く感じられません。いつか、彼の新たな物語も見てみたいところですが、今は多くを望めなさそうです。
そして言峰とギルガメッシュ。ギルガメッシュは「聖杯の中身」を浴びる事によって受肉を果たし、また切嗣に殺害された筈の言峰もまた、「新たな命」を得て蘇りました。そしてギルガメッシュは語ります、「今回の聖杯戦争の勝者は我々である」と。目の前の惨状は言峰の願いを聖杯が叶えたものである、と。
その事実を前に涙さえ浮かべて狂喜する言峰。だが、まだ足りない。「答え」だけ得ても足りない。今までの問うだけの人生から、今度は愉悦を得る為の人生を彼は歩みだす。
その最初の生贄とも言えるのが、恐らくは凛なのでしょう。「父の形見のようなもの」と言峰から手渡されたアゾット剣を抱え泣きじゃくる凛。彼女はきっとそれを大切に大切に扱う事でしょう――それが父の命を奪った凶器だとも知らず。その姿を見て、思わず邪悪な笑みを浮かべてしまう言峰の姿が、これからの彼の人生を明示していると言っても過言ではないでしょう。

という事で、一応はそれぞれの結末が描かれた本作ですが、タイトル通りこれは「Zero」つまり始まりへと至る物語です。「Fate」という作品の本当の終わりが描かれるのは「Fate/stay night」です。
以前も書きましたが「Zero」と「stay/night」では作風が大きく異なります。それでも、この「Fate」という物語の結末を目撃したい、という方は――出来ればTVアニメではなくゲーム版をプレイする事をお勧めいたしますｗ