大河ドラマ「風林火山」総合感想
- 作者: 井上靖,大森寿美男,NHK出版
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2006/12/20
- メディア: 大型本
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いやぁ、当初は「何、この金曜時代劇?」的なノリで激しく不安だったこの作品ですが、終わってみると実に「大河ドラマ」にふさわしい出来でございました。
(以下ネタバレ感想)
この風林火山というドラマの魅力の第一は、やはり役者力であったといえます。主役の内野聖陽を代表に、主人公の師的立場である板垣を演じた千葉真一、武田信玄を演じた市川亀治郎、上杉謙信のGacktなどなど、メインキャストが実に存在感あふれるキャスティングで、それぞれの存在感が戦国乱世さながらのぶつかり合いを魅せてくれた、と感じました。
また、主人公の勘助が、天才的な軍師というよりは、乱世という荒波の中を全力でもがき苦しみながら進んでいく、一人の男として描かれていたことが魅力であったと思います。一言で言えば、その人間臭さこそが良い、と。
中盤の主役はなんと言っても、千葉真一演じる武将・板垣でした。武田晴信(信玄)を影に日向に支える忠臣振りと、高い実力を持っていながらいまだに人間的にも武人的にも未熟である勘助を、実に暖かく見守るその姿、そしてあくまで忠義のために死地へ赴くその雄姿……。千葉真一は、この板垣という役を最後に俳優業の引退を発表しておりますが、まさに役者・千葉真一の全てが注ぎ込まれた、近年まれに見る名キャラクターでありました。
そして、板垣退場後の勢いを保ってくれたのが、Gackt演じる長尾景虎(上杉謙信)でした。当初は、存在感こそあれ演技の面で不安に思っていたのですが、蓋を開けてみればあらびっくり、「これはGackt以外には演じられないよ」といった感じの素晴らしいキャラクターでございました。勘助を「地」とするならば、神がかり的な存在である景虎はまさしく「天」といった対比構造が、実に素晴らしゅうございました。
もちろん、上で挙げなかった役者陣も皆素晴らしいの一言でした。また、近年では一番血なまぐささを演出すると同時に、どこかでコミカルさを忘れない脚本も、序盤は今でもどうかと思いますが、秀逸であったと思います。
やはり、大河ドラマの華は戦国時代なんだな、としみじみと思わせてくれた、実に見事な「大河ドラマ」でありました。