今回の満足度:5点(5点満点中)
(以下ネタバレ)
あらすじ
レスキネン教授と比屋定が作り上げたのは、亡き紅莉栖のアイディアを元にした「人間の記憶をコピーしたAI・アマデウス」だった。
それはあまりに突飛であり、会場の中からはそのアイディアを疑問視し一笑に付す者まで現れるが、紅莉栖を笑われたように感じてしまった岡部は思わず声を荒らげてそれを批判してしまう。
一瞬「しまった」と思った岡部だったが、教授はその岡部の姿勢を称賛し、また会場も「まずはモノを見てみよう」という雰囲気に落ち着く。
そしていよいよ、そのAIが公開された。
デモンストレーションで公開されたのは、比屋定の記憶をコピーしたAIだった。
会場からは「いくつかのパターンを記憶させただけでは?」との疑問が上がるが、AIは感情の機微や不必要な記憶の忘却を見せるなど、まるで人間そのものの見事な受け答えをしてみせる。
セミナー終了後のパーティー会場で、岡部は再び比屋定と出会い、紅莉栖の知人だった事を知られてしまう。久しぶりに紅莉栖の話題を共有できる人間と出会い、岡部は珍しく明るい表情を見せるが、逆に比屋定は紅莉栖の事を思い出して泣き出してしまう。
そんな比屋定を慰めている所にレスキネン教授がやってくる。
セミナーの時の岡部の言動や、紅莉栖の知り合いだという事に興味を持ったレスキネン教授は、岡部にある意外な提案をしてくる。
アマデウスは比屋定ベース以外にもう一つ作成されており、岡部にそのアマデウスと会話して欲しいというのだ。
そのアマデウスのベースとなった人物とは、牧瀬紅莉栖であった――。
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感想
紅莉栖をバカにされたと感じた事で岡部が声を荒らげたシーンを観て、不覚にも目頭が熱くなってしまった。
岡部は決して紅莉栖との記憶から逃げたのではなく、大切だからこそ向き合い続け、そして苦しみ悩み続けているのだ――紅莉栖の存在は今も岡部にとって最も大切なものなのだと、痛感した。
だから、アマデウス紅莉栖と対面した時の岡部の、この世の悲哀を全て詰め込んだような複雑な表情に、心底胸が痛んでしまった。
これほど主人公の痛み、悲しみに思いを馳せ、同情してしまう作品が他にあるだろうか……?
――等と思っていた所に、岡部がついつい今まで通りのノリで「クリスティーナ」と呼んでしまうという展開を挟んで来るのだから、何とも意地の悪い脚本だ(苦笑)。
微笑ましい一幕ではあるが、その後の岡部の様子を見るに、あまりにも紅莉栖そのままであるアマデウスとの交流は、岡部の傷を悪化させるものではないか、との危惧もある。
そんな岡部を見つめるまゆりの表情がまた、涙を誘う。彼女は、本当に岡部の事を愛しているのだな、と……。
しかし気になるのは、アマデウス紅莉栖のタイムマシンへの考え方が、かつての牧瀬紅莉栖と異なっている点。
岡部は世界線の違いから生じる齟齬と考えたようだが、そもそも今の世界線で将来起こる大戦の原因となるのは、紅莉栖が父親に奪われた例の論文――タイムマシン理論だ。
つまり、紅莉栖がタイムマシンにやや肯定的なのは当たり前のはずなのだが……岡部にも記憶の齟齬があるのだろうか?
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