たこわさ

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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ #50「彼等の居場所」感想

TVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』 Original Sound Tracks II
今回の満足度:4点(5点満点中)
(以下ネタバレ)

あらすじ

仲間達を逃がす為、殿をつとめる三日月達。だが、ギャラルホルンの大部隊を前に、仲間達は一人また一人と散っていく。潮時とみた三日月はユージン達を先に離脱させ、自分は昭弘と共に残りギャラルホルンの部隊を引き付ける。気力十分の二人だったが、遥か頭上では、ラスタルが準備していたダインスレイヴ部隊が彼等に照準を合わせていた――。

感想

最終回単品としては、そこそこ無難にまとめた「良い最終回」だったと言えるが、やはりやっつけ仕事感が残ってしまった。

ラスタルの翻意の理由がいまいち

基本的に強硬策を押し進めてきたラスタルが、あそこまで「優しい世界」を作る方向に翻意したその経緯が描かれなかったのは残念。もちろん、イオクが最後の最後で自滅してしまった事で、旧態依然としたギャラルホルンの支配体制が維持できなくなってしまった為に、ラスタルとしても「もっとも世界が安定するであろう方法」を取るしか無かったのだろう、と推し量る事は出来る。――出来るが、その「物分りの良さ」が何故もっと前段階で発揮されなかったのか? という疑問が残る。
ラスタルが最初から鉄華団やマクギリスを生け贄にしてこのような結末を得ようと画策していた、というのなら話は分かるのだが……アーブラウに揺さぶりをかけていた頃の彼の行動とは矛盾するわけで、何ともしっくりこない展開だった。

ガエリオジュリエッタに救われたが……

ガエリオジュリエッタが生き残ってくれた点は素直に嬉しいと感じた。
ガエリオはきちんと後悔をしながら、かと言って卑屈にならずに生きているようで実によろしい事だが……車椅子生活は少々やりすぎだったのではないか、と思う。彼にはきちんと「責任」を取って、世界を導く役割を担ってほしかった。というか、ラスタルではなくガエリオこそが指導者の立場になっていてほしかった……。
ジュリエッタとのバカップル振りは見ていて微笑ましいものではあったのだが。

最後まで目的を見失わなかった三日月

三日月は最後までブレなかった。彼の言葉と行動が、鉄華団やその後の世界が変わる大きな要因となった事は疑いようがない。オルガの目指した先の世界、それは奇しくもラスタルの手を借りたクーデリアによって実現されたのだが、鉄華団の少年達はその世界で今後も生きていくことになる。
クーデリアをその舞台まで押し上げたのは、直接的には蒔苗やマクマードだが、その彼等を動かしたのは鉄華団であり、鉄華団を動かしたのはオルガと三日月だった。初志貫徹という言葉がここまで似合う主人公というのも、近年珍しかったのではないだろうか?

昭弘、お疲れ様……

昭弘については、彼を取り巻く状況を考慮しても生き残るつもりがない事は明白だった。だから、彼の死自体は悲しくはあるが虚しくはない。
しかも最後の最後に文字通りの仇敵であるイオクを抹殺し、それが巡り巡ってギャラルホルンの現体制の崩壊へ繋がった(であろう)ことを考えれば、三日月と同じく間接的に世界を変えたのは彼だとも言える。
――というか、よくイオクを最も惨めな方法で殺してくれたグッジョブ! だった。間違いなく、殆どの視聴者は溜飲を下げたのではないだろうか? 彼にお似合いの末路だったが……出来れば地位も名誉も全て失い絶望に堕ちたあと、彼が惨殺したタービンズの残党の情によって介錯される位はやってほしかった(苦笑)
不幸過ぎた昭弘の人生を思えば悲しすぎるほどの報酬だったが、それでも視聴者の心にも僅かな救いを残し散っていった昭弘というキャラに、「お疲れ様」と言いたい。

全滅エンドは避けられたものの……

アルミリアの姿が見えなかったのが不穏。
ガエリオの様子から察するに不幸な事にはなっていないのかもしれない――が、実はガエリオが車椅子だったのはアルミリアに(あえて)刺されて障害が残ったから……という線もあるのではないかと妄想してしまった。
ついでに言うと、ガエリオジュリエッタにストレートすぎる求愛行動をしていたのは、アルミリアが既に自殺していて、家の血筋を絶やさない為に伴侶(しかも英雄視されている人間)を求めてのものだったのでは……等とも。
もちろん、ただの妄想なのだが、都合よくアルミリアの存在が漂白されたこの最終回を見るに、その位の裏設定があってもおかしくない(苦笑)。

血なまぐさい世界に残り、仇討ちに拘ったライド達数名の少年の末路については……あれもまた「オルガの遺志を継ぐ」事だったのではないか、と好意的に解釈した。というか、そう考えなければ救われない。
ラスタルと違い、ノブリスは文字通り私欲のためにこれからも暗躍しただろうし、火星だけでなくギャラルホルンにとっても厄介な相手だった。折角クーデリアが仇と手を組んでまでオルガ達の理想を叶えたのに、ノブリスがいてはそれも完璧ではない。ライド達はそう考えたのではないか、と。
なんなら、マクマードが彼等のバックにいたとしても構わない。「清濁併せ呑む」の「濁」をあえて引き受けたのだ、と。
今までの出来事が無かったかのように「漂白」された世界なのだから、その位の描写はしてほしかった……。

クーデリアが得た「家族」についてはノーコメント。

Twitterを眺めていた所、この最終回については概ね好評だったようだが、私としては以上に挙げた点から、作品全体への評価を上方修正させるに足る内容ではなかったと感じた。

追記

Twitterを眺めていたら、本作に好意的な方々のツイートで「主人公補正がないのが良かった」というご意見が散見され、思わず膝を打った。なるほど、そういった方向から観ている方には、それほど悪い作品とは感じられなかったのかもしれないのだな、と。どのアングルから作品を俯瞰するかで、評価の変わる作品だったのかもしれない。*1

TVアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」Original Sound Tracks

*1:とは言え、それはどんな作品にも共通することなのかもしれないが。