たこわさ

はてなダイアリーから移ってきました。暫くの間、レイアウトの乱れやリンク切れ等あると思いますが、ご容赦を。

Fate/stay night [Unlimited Blade Works] #16「冬の日、願いの形」感想

原作プレイ済み。映像化作品全て視聴済み。
なお、#15までは先行上映会でオリジナルバージョンを視聴済みの為、今回からは未視聴状態。
(以下ネタバレ)

あらすじ

イリヤバーサーカーギルガメッシュの前に斃れた。イリヤの無残な姿を、それを更に傷つけようとするギルガメッシュの行為を見た士郎は、凜の制止を振り切ってギルガメッシュの前に躍り出てしまう。セイバーを伴っていない士郎に価値を感じないギルガメッシュは、即座に士郎を始末しようとするが、そこに慎二が闖入する。不用意な慎二の行動を見逃さなかった凜は、慎二に狙いを定め彼の命を盾にギルガメッシュにこの場は退くよう脅しをかける。興をそがれ、また凛を「器」の候補として見定めたギルガメッシュはその場を去っていく。
イリヤを埋葬した士郎達。彼女の墓を前に、凜は自分の制止を振り切ってギルガメッシュの前に飛び出したことについて、士郎を詰問する。自分の命を勘定に入れていない士郎の歪さを指摘する凛だったが、士郎は凛の指摘そのままの歪な表情を浮かべ、凜の言葉を否定する。
「十年前の大災害の時に見捨てた命に報いるために今度こそ全てを助けなければいけない」「自分を救ってくれた切嗣の嬉しそうな姿に憧れた。そういう者になりたかった」、それらの言葉から士郎が既に「壊れて」いる事を悟った凛だったが、それでもそんな士郎だからこそ自分が幸せにならなければならない、と素直な自分の気持ちをぶつける。そんな凜の言葉に自分の歪さを認めつつも、士郎は「誰かの為になりたいという気持ちが間違いなんてはずがない」と凛に答える――今までの歪な表情ではなく、自分を心配してくれる凛への素直な感謝の気持ちを表す、満面の笑みで。そんな士郎の笑顔に呆れ果てつつも、凜は「(士郎の幸せは)自分が何とかする」と彼を見捨てるようなことはしなかった。

アインツベルン城を去り、今後の策を苦慮する二人。ギルガメッシュの宝具が「様々な宝具の『原型』を収めた蔵」である事、彼は宝具が強力なのであって自身の能力自体は他のサーヴァントに勝るものではないという事を看破した士郎だったが、対策は全く思い浮かばず、当面はキャスターへの対策を第一とする事に。しかし、キャスターも難敵である事に変わりはなく、頭を悩ませる二人。その時、彼らの頭上にランサーが現れ、対キャスター戦での共闘を申し出て来るが――。

感想

ハートキャッチ☆ギルガメッシュ――とかなんとか呼ばれているシーンが冒頭で憂鬱な事この上ないエピソードでしたが、慎二の道化振りとか士郎と凜の痴話喧嘩だとかで癒されました……。

慎二については、結果的に見れば士郎達を救ったのは彼ですし、あのギルガメッシュに馴れ馴れしい態度をとり呼び捨てまでしているのに見逃されているという、ある種稀有な才能の持ち主ですよね――もちろん道化の。慎二に背を向けたギルガメッシュの表情が実に「愉悦」に染まっていたのが笑いのツボでした。

今回、士郎の歪さの正体を看破し、それを正そうとした凛ですが、やはり彼の歪めは根深くとても矯正できるようなものではありませんでした。それでも、士郎に自分の歪さを認めさせることには成功した、と思います。かつて美綴に「笑わない」と言われた士郎が、あんなに真っ直ぐな笑顔を浮かべられたことがその何よりの証左でしょう。例え自分の有り方が間違っていても、「誰かの為」という思い自体は間違いじゃない。凜のおかげで、士郎はある種の悟りに達したのかもしれません。だからこそ、凜は士郎が自分で自身の幸せを掴む事を諦め、代わりに自分がそれをやろう、と思ったのでしょうね。凜のあの言葉はまさしく苦言なんですが、同時に一生添い遂げるという一種の告白ですよね(笑)。あの時点で凜は自覚してなかったのでしょうが。


一方、士郎はもう凛への好意を全く隠したりしません。ランサーの軽口に嫉妬して「遠坂はやらないからな」とか、実に真っ直ぐ言っているからアレですが、内容だけとれば実に情熱的な愛の言葉ですよねw そりゃあ凛も真っ赤になって動揺して余裕をなくしますわ。「常に余裕をもって優雅たれ」という家訓にはもう(笑)を付けるべきだと思いますー。

――ちなみに、もし士郎がギルガメッシュの前に飛び出さなかったら、この展開はきっと無かったんですよね。凛が士郎の歪さの正体を真の意味で理解する事もなかっただろうし、それを正そうと言葉を尽くす事もなかっただろうし、士郎が自分の歪さを認めつつもその理想を後悔しない決意を固める事もなかった。ゲーム的に言えば、というか原作ゲームでも所謂「正解の選択肢」だった訳で。

さて、実に飄々としつつもランサーはやっぱり誠実な男ですよね。マスターの命令だというのは真実であり、それでも恐らく隠した意図はあるんでしょうけれども、あくまで士郎と凜に対して少なくとも嘘はつかない。本当に二人の事が(というか凜の事が)気にっているので手を貸した、という部分には全く嘘はない。主人を裏切ったアーチャーへの怒りの言葉も嘘ではない。クーフーリンという英雄はその誠実さ故に悲惨な最期を迎えたはずですが、それは同時に彼の美徳である、とこの作品では描かれているように感じます。

キャスターのもとへ向かう直前、凛が例のペンダントが二つ存在する、という事を士郎に明かしました。凜は既にその意味を察していたようですが、士郎も何か予感を感じていたのか、凜が何を言いたいのかをすぐに理解した模様。今回、士郎は自分の歪さと向き合い、一定の答えを得ましたが、いよいよもう一つ、彼が乗り越えなければならないものと向き合う時も近付いてきたようです。

上記を踏まえてアーチャーと葛木の会話シーンを見ると、色々と感慨深いものがありますね。「最後までアンタを知る機会が無かった」というアーチャーの言葉は多分「最後」ではなく「最期」。葛木がアーチャーに「正しさとは何か?」と問われた時の答え。葛木はキャスターの真の望みもよく理解していましたが、もしかするとアーチャーの問いの意味についてもおおむね理解していたのではないかな……と。だから、おそらく葛木の言葉は「朽ちた殺人鬼」のものではなく。まあ、穿ちすぎかつ無粋な考察なんでしょうが。