たこわさ

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「ウルヴァリン:SAMURAI」感想

(以下ネタバレ)
最大のネタバレを最初に書いてしまうと、本作の一番の見所は最後の最後、エンドロール直前にある。本編が終わったからといってそそくさと席を立たないことをお奨めする。
さて、「ウルヴァリンが日本のヤクザを相手に大暴れ」というコンセプトからして(原作ファンならずとも)本作が相当にB級臭漂う脚本になっていることは想像に難くないのだが――実際にシリーズでも屈指のB級脚本だった。「X-MEN」シリーズ第一作とタメを張るのではないだろうか?
アクションシーンについても相変わらずローガンの能力に任せたワイルドな戦いっぷりが魅力であったが、本作はどうにも全体的にカメラが寄り気味であり、結果悪酔いしそうになる場面も多々あった。私は通常版を観たがあれが3Dになると相当に眼と脳に負担をかけるのではないだろうか、などと要らぬ心配をしてしまったほど。
だが、一番懸念されているであろう、日本についての描写は思ったよりも悪くなかった。もちろん、細かいところではツッコミ所満載なのだが*1、実際の町並みや建物を使用している部分も多く、映像的に我慢ならないレベルのものは見受けられなかった。しかし、いくらミュータントがいる事が普通の世界という設定でも、日本という国においてSPがサブマシンガンで武装しているという設定はどうにかならなかったのだろうか、とその点だけはどうにもしっくりこなかった。
また、本作では真田広之がメインキャストの一人として出演している事で、日本人としては彼の活躍に期待してしまうところだが、本編ではそれなりに存在感はありつつも役柄的にどうしても小物っぽくなっていて残念至極。もっとも、ローガンとの対決シーンでは真田広之自ら提案したという、二刀流を軸にした体当たりのアクションシーンを展開しており、見るべき所がないわけではないが……。
その他、長崎への原爆投下シーンが(山向こうが爆心地らしく描写こそあったが)実際の被害範囲を考えればありえないほど控えめに描写されていたり、真田広之以外の日本語台詞が悉く棒読みでゲンナリする事がたびたびあったりなど、不満点を挙げればキリがない。
以上、概ね批判的な評価となってしまったが、ローガン=ウルヴァリンという一人の男の内面を描いた作品としては、実にセンシティブに描かれており一定以上の評価を下したい。特に、原作とは違いヒロインが死なず、ローガンが「愛した女を守りきれずに死なせてしまう」というトラウマを克服したことは大いに評価したい。

*1:特に移動時間など。看板の謎日本語はご愛嬌か。