たこわさ

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「蒼き鋼のアルペジオ 16」感想――そして群像は「彼女」と出会う

蒼き鋼のアルペジオ 16 (ヤングキングコミックス)

第二部に入ってからは、世界設定や各キャラクターの掘り下げが多くなっており、読者の中には「展開が遅い」と感じている方もいるようですが、私的には群像劇としての面白みが右肩上がりに感じられ、むしろの戦闘中心の展開よりも楽しんでいる部分があります。

(以下、ネタバレ含む)

アドミラリティ・コード

遂に登場した「アドミラリティ・コード」を名乗る存在、「グレーテル・ヘキセ・アンドヴァリ」。「魔女(セイレーン)」とも呼ばれた、と自称していますが……群像を蘇生させ思わせぶりな言葉を投げかけるだけ投げかけ、消えてしまいました。

「いや、全部語っていけよ!」という声が聞こえてきそうですが、そもそもは群像と対話するつもりも無かったようなので、あれはグレーテルのサービスなのでしょうね。
彼女の言葉を要約すると、どうやら彼女によって人類(と霧の艦隊)に何らかの試練が課される時が近付いている……ということのようです。

しかもビスマルクとアーチャー卿は何やらグレーテルについて知っている様子……。そもそもアーチャー卿とビスマルクは一世紀以上の付き合いらしいのですが、メンタルモデルであるビスマルクはともかく、「人間」と名乗っているアーチャー卿はどうみても少女の姿……百歳超えの女性には見えません。

グレーテルが「最初は自分を人間だと思っていた」なんて言葉を口にしているところから見ても、アーチャー卿もグレーテルと似たような存在である可能性が?

グレーテルの名前に含まれる「アンドヴァリ」という言葉も気になりますね。
確か、北欧神話における知恵ある小人の名前だったかと思いますが……そう言えば、一部物語では彼は「指輪」と深く関係していますね。グレーテルも「指輪」という言葉を口にしていましたが……。

コテコテの路線だと、造物主が霊長類(人類と霧)に試練を与える展開で、アドミラリティ・コードはその造物主の代行者、と言ったところでしょうか? もう一捻りも二ひねりもありそうですが。

ひたすらに使命を果たすイオナ達と白鯨クルー。だが、そんな中でも変化が

群像が蘇生と共に物語の確信に触れる一方で、イオナ達は未だに「霧の艦隊と人類の戦い」の真っ最中です。
当初の予定通り、白鯨をアメリカ大陸へ送り届ける事をミッションとして課しているようですが……そんな中でも、駒城艦長にぞっこんになってしまい「一度だけ助力する」と書簡(兼盗聴装置)を送りつけているレパルスのような存在が出てきていたり、最前線でも人類と霧の関係に少しずつ変化が生じているようす。

ゾルダンとレキシントンの邂逅、そしてレキシントンがすっかり人間社会に溶け込んでいることが明かされた件からも、これからは直接放火を交える以外の戦いも増えていくのではないか、ということを予感させますね。

日本では、400と402が総旗艦の命を受けて日本政府への助力を申し出ていたり、タカオ達は群像チームの「旅立ちの記憶」を見せられて困惑したりと……同時進行的に物事が目まぐるしく動いている様子。

読んでいて助かるのは、こういった複数視点の物語を、変に並行して描いていない点。
よくある「下手くそな漫画」だと、群像劇を意識するあまり視点があっちへ行ったりこっちへ行ったりと、落ち着きがない。
その点、本作はある程度視点を固定してじっくりと描きつつ、次第に別視点へとシフトしていって、最終的に全体像が明らかになる、という手法を堅持してくれているので、非常に好感が持てます。


蒼き鋼のアルペジオ メンタルモデル・タカオ オーバーニーVer. 1/6 完成品フィギュア