今回の満足度:4点(5点満点中)
(以下ネタバレ)
あらすじ
- 11「転輪する勝利の剣 ―エクスカリバー・ガラティーン―」
- 遂に第七階層に辿り着いたハクノとセイバー。その階層には「最強のマスター」であるレオがいるはずだった。1000年前の聖杯戦争で、本来ならば優勝していたはずのレオだったが、マスター達の間では、「レオが岸波白野に勝ちを譲った」という噂が流れていた。果たしてその真相は――?
- 12「天輪聖王 ―チャクラ・ヴァルティン―」
- ガウェインの超強力な宝具を受け、最下層まで落とされてしまったハクノとセイバー。SE.RA.PH停止までもう時間がない中、再び第七層へ戻るのは絶望かと思われた。だがその時、ハクノがありすから託された栞が淡い光を放ち――。
- 最終話「喝采の薔薇 ―オリンピア・プラウデーレ―」
- 自らの戦う目的を見出したハクノは、セイバーと力を合わせガウェインとレオを打倒する。ムーンセルを正常な状態に戻すという目的を胸に、熾天の檻へと向かうハクノ。そこに待ち受けていたのはトワイス・H・ピースマン……ではなく、彼の残した負の感情で動き続ける「デッドフェイス」だった――。
感想
はっきり言ってしまうと、本作は決して出来の良いアニメではなかった。
一部のエピソードをのぞいて、演出は単調、バトルは緊張感のない大味な構成、長台詞の「間」を埋めてくれるような仕掛けがあった訳でもなく……なんとも残念な印象しか残らなかった。
しかしながら、背景美術や声優の演技、そして何より奈須きのこが徹底して自作のテーマとして描いている「人間讃歌」という意味においては、実に素晴らしいものだったと断言できる。
「何者でもない」岸波白野がやがて自分自身になったのとは違い、岸浪ハクノは「死者の妄執」からスタートしたという、空っぽどころか「既に終わっている」存在だった。だが、そんな彼が1000年の間に積み重なったマスター達の思いを受けて、一個の人格として目覚めていった。
本来は「ありえない」ことを起こしてみせた。
死者から生まれたものが、生者となった。
そんな彼の物語を見せてくれたことに、心から感謝したい。
もしこれがノベルゲームのシナリオだったなら、もしくは小説の類だったなら。もう少しシナリオに寄せた演出が出来ていたら*1。
そう思わずにいられないという意味で、なんとも惜しい作品であった。
追記
何やら本感想が結構読まれているようなので少しだけ追記。
ラストの凛は、彼女の生身の姿(EXTRAの凛の本体は金髪碧眼の少女)にも見えた。
1000年の時の中で彼女の肉体は失われているはずなので、あれは生身そっくりに作り直された電脳体であり、SE.RA.PHの中での出来事……とも受け取ることが出来るが、崩壊した文明の残滓にテクスチャが上書きされるような描写もあったので、ムーンセルによって(何らかの方法で)地上の環境の一部及び凛の肉体が再生された、と受け取ることも出来る。*2
この辺りの解釈については視聴者側に委ねる、ということだろうか。
8月に発売予定の原案シナリオ集を読めばもう少し詳細が分かりそうなので、そちらをチェックしたいと思う。
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というか、この原案シナリオの熱量をそのままアニメにできていたら……と悔やまれる。
また、私的にもう一つ本作で不満だった点をあげるならば……キャス狐がシルエットで一瞬だけ登場、というところだろうか?(苦笑)
ファンサービスが逆に残念無念な気持ちになるという典型だった。
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