今回の満足度:5点(5点満点中)
(以下ネタバレ)
あらすじ
アマルガムの実行部隊に包囲された宗介とかなめ。折しも、全世界的な電波障害が発生している中、味方のヘリが到着するまでの間、二人は孤軍奮闘を強いられる事に。
修羅場には慣れているつもりのかなめだったが、いつもと違い死と隣合わせの――眼の前で敵兵が血飛沫を上げて死んでいく戦場の空気に飲まれ始めてしまう。
一般人を巻き込むことを厭わぬアマルガムのやり口に、宗介とかなめは次第に追い詰められていく――。
一方、メリダ島も敵の度重なる襲撃を受け、死傷者も出始める。
しかもダメ押しとばかりに3機ものベヒモスが上陸し、AS隊員のスペックは「テッサとダナンを無傷で差し出せば助かるかもしれない」等と、本気とも冗談ともつかぬ事を言い始めてしまう。
SRTの中で不和が生まれようとしたその時、テッサがその場に現れ思わぬ言葉をかける――。
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感想
スペックの「嫁さんにしたい」とそれに対するクルーゾーの「プロポーズは階級順だ」は至言。
「兵士だから命をかけるのは当たり前」という暗黙の了解を、指揮官であるテッサが暗に否定してみせたのも痛快。
スペックの言動に不快感を覚える方もいるかもしれないが、あれは彼が彼なりに「自分達が助かる方法」を考えた結果であり、テッサが上官としての気概を見せたからこそ、その後はおとなしく従ったのだという事を、どうか理解してあげてほしいと思う。
無謀な作戦の為に兵士がただ命を落とすような戦いは、ひとえに上官が無能である証なのだから、上官には本来「犬死にはならない戦い」を提供する責任がある。ただそれだけなのだ……。
そういった意味では、テッサは最高の上官なのだろう。私もあんな事を言われたらプロポーズせざるを得ない(笑)。
日常を守ったが故に失う皮肉
さて、宗介とかなめの陥った状況は、実はメリダ島よりも絶望的かもしれない。
今まで、数々の修羅場を潜ってきたかなめだが、それでも多くの命がゴミのように散っていく殺し合いの場の経験は殆どなかった。だから、覚悟がない。
「私が(銃を)撃とうか」という言葉も、本当にその意味を分かって言っているのか怪しいところだ。
この期に及んでも、彼女は「非日常」への覚悟が無かった。
少々酷いことを言ってしまえば、それは宗介やテッサがかなめを甘やかした――ウィスパードという特殊な存在である以上、彼女にはある程度「日常」を諦めてもらうしか無かったのにしなかった――事が遠因な訳だが……かなめの日常を守る事は、宗介にとってはある意味で生きる目的でもあった。
それが今まさに宗介を追い込んでいるというのは何とも皮肉ではあるが……誰も彼に「かなめに日常を捨てさせれば良かった」等と無体な事を言う資格が無いのも事実だろう。
かなめの日常は、宗介にとっての日常にもなりつつあった。
少年兵として育った宗介が得られなかった「普通の生活」、それをかなめに「捨てろ」等とは言えなかったはずだろう。
かなめの為にも、宗介自身の為にも。
しかし今、その日常が脆くも崩れ去ろうとし、そして彼らの日常の象徴とも言える親友・恭子が本格的に巻き込まれてしまった。
宗介とかなめの自業自得が、親友を巻き込んでしまった。
その事を誰よりも痛感しているのは、きっと宗介とかなめ自身なのだ。
遂に、二人が覚悟を迫られる時がきた。二人の答えは果たして……?
頼りになりすぎるアルだが……
絶体絶命の宗介達にとって救世主のように現れたアル。
だが、彼のこの戦場での「初仕事」は、ヒロイックなそれではなかった。
炎上するヘリから仲間を救出(即死ではあろうが)することもなく、宗介の命令で敵を血煙と化していく、兵器本来の姿を見せた彼が、かなめの目にどのように映ったのかは……言うまでもない事だろう。
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