たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などのレビュー・感想・情報を中心にお送りする雑多ブログ。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 第9話 感想

今回の満足度:5点(5点満点中)
(以下ネタバレ)

あらすじ

ギルベルトの姿を求めて各地を彷徨うヴァイオレット。
身も心もボロボロになった彼女を何とか社まで連れ戻したホッジンズだったが、ヴァイオレットはそのまま自室にこもりきりになってしまう。

エリカとアイリスはそんなヴァイオレットを心配するが、自分達に一体何が出来るのかと思い悩んでしまう。
そんな時、ヴァイオレットに代筆を依頼しに、意外な人物が訪ねてくる――。

感想

本作が始まった当初は、もっとアクロバティックな展開で楽しませるタイプの脚本だと(何故か)思い込んでいたのだが……この時代に、ともすれば「地味」と捉えられかねない、このような真っ直ぐな、それでいて情緒に溢れた脚本を描いてくれた事に、惜しみない拍手を贈りたい。

凡百の脚本ならば、何らかの都合の良い奇跡が起こったり、はたまた仲間達が力を合わせてヴァイオレットを元気付けようと右往左往する様が描かれるのだろうが、本作は違う。
あくまでも地に足の着いた、出来る事が限られた普通の人間だからこその手段で、ヴァイオレットを立ち直らせた。

ヴァイオレットが急に立ち直ったように見えた方もいるかもしれないが、そういう方は今までの話を観直して頂きたい。
ここ数話で、ヴァイオレットは急激に成長したように見えるが、実際には前回と今回で描かれたように、ギルベルト少佐によって彼女は既に「一人の人間」としてきちんと育てられていたのだ。
ただ、それを自覚し、己の心に従うという事が出来なかっただけなのだ。

ヴァイオレットが自動手記人形として一人前になったのは、勉強し成長したからだけでなく、彼女が元々培っていた人間性がようやく開花したから、という所が大きいはずだ。
だから、今回彼女が見事に立ち直ってみせたのも、彼女が本来持っていた――ギルベルト少佐によって育まれた――彼女本来の強さの発露なのだ。少なくとも、私はこの物語をそう捉えた。

ようやく、一人の人間としての自覚を得たヴァイオレット。
次に彼女が進む道こそが、本当の意味での始まりになるのだろう。

KAエスマ文庫 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 上巻