たこわさ

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正解するカド 第十話「トワノサキワ'」感想

第1話 ヤハクィザシュニナ


今回の満足度:5点(5点満点中)
(以下ネタバレ)

あらすじ

ザシュニナから、異方が人類に接触したその真意を打ち明けられた真道。更にザシュニナは真道に、異方に来るよういざなう。だが、ザシュニナの要請はあまりにも性急すぎ、真道は戸惑いを隠せない。
そんな真道の様子を見たザシュニナは、「失敗した」と語り、今の真道を殺し数時間前のコピーと入れ替えるという暴挙に出ようとする。迫るザシュニナの攻撃。だが、すんでの所で真道を救ったのは、カドの外にいたはずの沙羅花だった。
徭沙羅花――その正体は、宇宙開闢よりこの世界を見守り、やがて異方からこちらの世界へとやってきた異方存在の一人だった。彼女は、異方による性急な人類の改革を望まず、あくまでも自然のままに任すべきだと主張する。
だがザシュニナは聞く耳を持たない。異方と完全に接続されたザシュニナと、この世界の一員となったことで本来の力を失っている沙羅花。力の差は歴然であり一方的な戦いが続く中、真道は――。

感想

「繁栄の花」ではないが、人類よりも高位の知性体が人類に有益な何かを授けてくれたとして、彼等の目的自体も人類にとって有益であるとは限らない――と言うテーマは、ある種のSFでは王道とも言える展開であり、ザシュニナの目的もまさにそれだったと言えるだろう。

ワムもサンサも、人類の進化スピードを上げ、種としての寿命すらも伸ばす可能性がある。だがその代わり、人類にとって大切な「何か」が決定的に失われてしまうことになる……。
沙羅花も真道も、ザシュニナを「間違っている」としながらも、具体的に「何が」とは言わなかった。真道が「それを言ってしまえばザシュニナの間違いを正せなくなる」とも語ったそれは……何となく予想は付くが、うまく言葉には出来ない気もする。

真道達の言っているそれとはまた異なるかもしれないが、ザシュニナは確かに間違えている部分があるように見受けられる。人類が異方も驚くほどの情報生産性を持つのは、恐らく自身の存在が不可逆であるからこそ、なのではないだろうか?

ワム、サンサ、ナノミスハインを駆使すれば、人間は3次元空間における殆どの制約から開放されることになる。真道を見事に複製してみせたように(終盤にザシュニナといるのは、恐らく複製の方だろう)、「個人」という概念さえ超越することも出来るだろう。恐らく、最終的には寿命という概念さえも無くなるだろう。
しかし、満たされ、時間の制限も無くなった人類に待っているのは……恐らく緩やかな衰退でしか無い。ままならないからこそ、時間が有限であるからこそ人間は考え、工夫し、記録し、後に託す。そのサイクルが失われるという事は、異方が求める情報生産性が無くなる、という事でもある。
ザシュニナは真道さえ連れて帰れればそれで良いようだが……残された人類に待っているのは、不幸な末路だろう。発展は止まり緩やかに衰退するが、かといって滅びもしない。それはなんという地獄だろうか?

とは言え

ザシュニナも自分自身の間違いに、どこか気付いている素振りを見せている。複製の真道は本当に彼が求めた真道と呼べるのだろうか? と考えているのか、それとも……。
ザシュニナの語る「正解」は、人類にとってはとても正解と呼べる代物ではなかった。人類が異方に影響を受けたように、異方もまた人類に影響を受けるのだとしたら、その「正解」も変わってくるのではないか……?
この物語が、悲しい結末で終わらないことを願いつつ、次回を楽しみに待ちたい。