あらすじ
名瀬とアミダ、タービンズの女達、そしてラフタの仇を討つ為に、鉄華団はテイワズとも手を切りジャスレイに「落とし前」を付けさせるべく戦いを挑む。
当初は鉄華団を舐めてかかっていたジャスレイだが、ただの傭兵とは異なる、真の武闘派である鉄華団の力は彼の想像を超えており、戦況は一方的なものになりつつあった――。
感想
今までの鬱憤を晴らすかのような戦闘描写の連続は流石だったが、カタルシスは皆無に近かった。敵役であるジャスレイは結局のところ頭が回るだけの小物であり、彼を討ち果たしたところで鉄華団側に得るものは何もなかった。ビスケットの仇討ちに燃えていたあの頃よりも更に、鉄華団は明日なき暴走の道へと突き進んでいるようにみえる。
せめてジャスレイがもっと魅力あふれる悪役であったなら、もう少し気分も晴れたのだろうが……。
良き理解者であるマクマードと袂を分かち、巻き込まぬためにクーデリアとも距離を取り、マクギリス達を唯一の同志として「火星の王」という、目的を叶える手段でしかないものを目指して走り続ける鉄華団の未来は、最後のクーデリアのモノローグからも感じ取れるように、ろくなものにはならないように見受けられる。
戦闘中に昭弘が思い出した、ガラン・モッサの言葉「戦場ではまともなやつから死んでいく」という言葉は、逆に言えば「戦場で生き残る為にはまともではいられない」という意味にもなる。昭弘が選んだように、鉄華団全体が「まともではない」方向に大きく舵を切ってしまった、その分水嶺が今回だったのではないだろうか。
「たどり着いた場所で馬鹿笑いしたい」とオルガは言い、三日月も彼にしては珍しい笑顔でそれに同意した。*1しかし、彼らが今の道を突き進めば、そこには心からの笑いなどない世界しか残らないのではないだろうか?
メリビットも、最早鉄華団の少年達を諌めようという気はなく、添い遂げよう=共に死のうと考えているようにも見えてしまう。オルガの迷いを汲み取りながらも、あえて背中を押してくれたユージン達の姿も、また。
救いが見えない、こんな物語にいつまで付き合えばいいのだろうか……。
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