たこわさ

はてなダイアリーから移ってきました。暫くの間、レイアウトの乱れやリンク切れ等あると思いますが、ご容赦を。

「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」は、折り目正しいスピンオフでありSFアクションだった

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー  オリジナル・サウンドトラック

公開から一ヶ月以上が経過し、自分の中でもようやく熱が冷めてきたので、遅ればせながら「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の感想を書きたいと思う。

まず、本作に対する率直な感想を言ってしまうと、最初の30分は微妙だがエンドロールが流れる頃にはすっかり作品世界に引き込まれてしまった程「良い作品」だった。
外伝ということで、シリーズお馴染みの演出やキャラクター等が姿を見せず、また導入部で世界背景などがあまり描かれなかったので、正直最初の方はあまり引き込まれるものがなかったのだが、物語が進むに連れて「ああこれはジン(主人公)の物語を一から紡ぐために必要な構成だったんだな」と気付かされ、「ただの外伝」として本作を処理しなかったスタッフの熱意を感じた。

時折、武勇伝のごとく「最初の30分があまりにも退屈だったんで途中で観るのやめた」等と宣う自称・映画のプロの方をお見かけするが、最初の30分では良さを判断できない映画は星の数ほどあり、本作もその例に該当する。*1

「希望」へ至る物語

本作はエピソード4の直前までを描いている。同作で、今回も登場した反乱軍の女性リーダーであるモン・モスマが「デス・スターの設計図を手に入れるために多くの同胞が犠牲になった」と情感たっぷりに語るシーンを印象深く覚えている方もいるだろうが、本作はまさにそこの所を描いた作品だ。
モスマの憂いに満ちた表情と一瞬の沈黙、それが意味するものは「悲劇」に違いないが、エピソード4は「希望」の物語だ。だからこの「ローグ・ワン」は「希望へ至る物語」だとも言える。

「戦うヒロイン」ジンは、実にスター・ウォーズらしい存在

主人公・ジンは歳若い女性。そんな彼女がドンパチやらかすという事で必然、「フォースの覚醒」を思い浮かべる方もいるだろうが、そもそもスター・ウォーズはヒロイン代表であるレイア姫からして最前線でブラスターをぶっ放したりギャングのボスを鎖で絞め殺したりとアグレッシブかつバイオレンスな側面を持っていた。そういった意味では「戦うヒロイン」であるジンは、スター・ウォーズの伝統に基づいたキャラクターであると言える。
彼女が他のヒロイン達と存在を異にするのは、「選ばれた戦士」ではなく「自らの意志で戦うアウトロー」であるという所だろうが、言ってみればそれは「女版ハン・ソロ」に個人的使命感を添加して主役に据えたようなものなので、やはり何とも「スター・ウォーズらしい」主人公には違いないのだ。*2

フォースの導きはない、だがフォースはいつもそこにある

本作はエピソード4の直前であるので、ジェダイは全滅してしまっている。フォースを操るのは皇帝とベイダーだけというまさしく「暗黒の時代」らしく、主人公側にフォースを操る人物は一切出てこない。盲目の戦士・チアルートはフォースを信奉し超絶な戦闘能力を見せるが、彼の能力がフォースではなく、優れた五感と鍛錬の賜物によるものであることは、作中でも明示されている。

しかし反面、本作はシリーズでも例を見ないほどに「フォースと共にあれ」や類型のお題目が連呼される作品でもある。フォースによる奇跡はないが、人々は勇気を奮う時、困難に立ち向かう時、死者を悼む時にフォースへ祈りを捧げる。本編ではルーク達が度々フォースで奇跡を起こすので、「フォースと共にあれ」を都合の良い奇跡を願う人々の祈りのように受け止めてしまう観客もいたかもしれないが、本来はこのように自分を奮いたたせる為の切なる祈りの言葉なのだ、という事を本作はこれでもかと思い出させてくれた。

エピソード6でルークが皇帝を打倒した方法然り。フォースは万能であるが、それは力ある兵器という意味ではない。シリーズを通して描かれた裏テーマとでも言うべき部分を、本作はきちんと汲み取って描いていたように感じた。

「娯楽大作」とは違うかもしれないが……

本作は全体を通してアクション多めであり、後半は「スター・ウォーズ」伝統の地上戦と空中戦のオンパレードなので、アクション大作としても十分に面白い。主人公ジンにまつわる親子の物語も情感たっぷりでありドラマ部分もサボっていない。
しかしながら、終盤の悲壮とも言える展開の連続は、「娯楽」の一言で済ませられるものではないだろう。人によっては、そこに「滅びの美学」を観てしまうかもしれない。
だが、本作は「希望へと至る物語」だ。もっと言えば、「希望」という名のバトンを次へつなぐ人々の物語と言える。滅ぶために戦うのではなく、「希望」を繋ぐために戦う人々の姿を描いたのが本作だ。単純な「滅びの美学」とは異なるのだということを強く主張しておきたい。

シリーズファン意外には辛いかもしれないが

スター・ウォーズは固定ファンが支えているような作品なので*3、「実は一作も観たことがない」「テレビでやっているのをなんとなく観たことがある」という方も少なくないだろう。本作は、そういった方々の観賞に耐えうるものかと問われると……少々自信がない。最低でもエピソード4の内容をしっかり覚えている方でないと辛いと思われる。
逆に言えば、エピソード4さえ押さえていれば、十分についていける内容とも言える。そろそろ上映終了する映画館も出てくる頃だろうが、エピソード4を「予習」する余裕くらいはあるだろう。
「爆発多め、でもストーリーはちょっと切ない」作品がお嫌いでないのならば、是非とも映画館へ足を運ぶことをお薦めしたい。

スター・ウォーズ K-2SO 1/12スケール プラモデル

スター・ウォーズ K-2SO 1/12スケール プラモデル

*1:序盤のキャッチーさというのは映画を売る上ではなかなかに重要な要素である、というのは分かるが、そのせいで不自然に序盤の展開が濃厚になり過ぎた勿体無い作品も多いので、プロの方にはこういった「30分で劇場を出た」系の発言は謹んで頂きたいものだ。井●監督とか。

*2:この辺り、「ポリコレのせいでスター・ウォーズの主役が二作連続で女に!」等と騒いでいた方もいるようだが、その方のご意見がどんなに的はずれなのか分かろうというものだろう。

*3:とは言えそのファン層の厚さが凄いのだが。