あらすじ
火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵は、「鬼の平蔵」と呼ばれ盗賊達から恐れられていた。だが、一本筋の通った盗賊には一目置くなど人情味あふれる部分も持ち合わせており、部下からの信頼も厚かった。
そんな平蔵のもとに、一人の盗賊が引っ立てられてきた。粂八という名のその盗賊は、厳しい責め苦にも屈せず仲間を売ろうとはせず、平蔵は咎人ながらも一本筋の通ったその態度に感心する。聞けば、粂八はかつて血頭の丹兵衛という盗賊に師事し、「殺さず、犯さず、金が有り余るところからしか盗まず」という<真の盗人三箇条>を教え込まれたのだという。若き日の粂八は、その教えを守らず破門されたのだが、あとになってその事を悔み、盗賊家業を続けながらもその三箇条だけは死ぬ気で守ってきたのだという。
ある日、牢の粂八の耳に、その血頭の丹兵衛を名乗る盗賊が家人を皆殺しにするような卑劣な手口で盗みを繰り返しているという噂が届く。きっと丹兵衛の偽物に違いないと考えた粂八は、平蔵にある事を嘆願するが――。