- アーティスト: 鷺巣詩郎
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2016/07/30
- メディア: CD
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数多くの識者の方々が絶賛されているように、「こいつはとんでもないものを作ってくれものだ!」というのが観終わっての感想。
同時に「これは観る人を選ぶかもな」とも。
所々に「オタク的文法」を取り入れていますので、そういった演出に全く耐性がない方は、おそらく拒否反応すら出るのではないかと思います――が、苦手な人もそういった所を乗り越えてくれれば八割方楽しめる作品になっている、と声を大にして言えるほど、本作は高い完成度と娯楽性を誇り、そして作り手側の圧倒的な熱意が込められた傑作でありました。
また、本作はぜひともネタバレ無しの状態での鑑賞をおすすめします。事前にWikipediaなどで調べると酷いネタバレに高確率で遭遇する為、予備知識を得たい方は公式webサイトまでで我慢しましょう。
ギリギリネタバレにならない程度で旧来ファンに向けて推薦コメントを書くと……「初代とかビオランテとかが好きな人は絶対に観に行け!」となるでしょうか?
(以下、鑑賞済みの方向けネタバレ感想)
本作は正しい意味での「原点回帰」の「ゴジラ映画」であったと思います。
いかにもアメリカンな人間ドラマもなく、過剰なヒロイックさもなく、「こんな事もあろうかと」開発されていたトンデモ兵器もなく、安易にリバイバルされた敵怪獣も登場しない。
あるのは、ゴジラという全くの未知の脅威に対する根源的な恐怖――「不気味さ」と、人智を尽くしても悉くその上をいくゴジラが振りまく「絶望」、時にそんなゴジラよりも恐ろしい人間に対する「嫌悪」、そしてそれでも必死に「絶望」に抗い希望を捨てない人間達を描く「人間賛歌」でした。
もちろん、「原点回帰」と言ってもいつぞやのような「ただの焼き直し」ではなく、現代の世相や文化を取り込み、目の肥えた「オタク」をも唸らせる行政・防衛に対するリアリティ溢れる描写を駆使し、庵野監督の個性を盛り込んだ演出を多用した、「新ゴジラ」もっと言えば「真ゴジラ」とでも呼ぶべき、一から見事にリビルドしてみせた作品に仕上がっています。
早口や棒読みが跋扈し、ろくな補助説明もない序盤の展開に戸惑う方もいたことでしょうが、それさえも中盤〜後半のカタルシス――特に初めてゴジラが放射熱線を放つシーンへの布石であり、実に無駄なものが何もない!
やたらと多い登場人物についても、結局本作は「個vs個」ではなく「ゴジラvs日本」を描いた群像劇だったわけで、ヒロイックで万能な誰かが圧倒的リーダーシップで事態を解決していく話にしないためにも必要不可欠な要素でした。
あと、この作品には実に色々なメッセージが込められているんですが、その中でもあからさまに東日本大震災への追悼とも取れるシーンが多いんですよね。ゴジラへの決戦兵器が、福島第一原発で活躍したコンクリートポンプ車や、ある意味日本人の誇りとも言える鉄道車両だったという辺りが……東日本の人間としては涙を禁じ得ない演出でしたが、実はあれって一種のデコイでもあると思うんですよね。東日本大震災を意識した「わかりやすい」メッセージの裏側に、更に数多くの声なき声が隠されている……映像作品とはかくありたいものですね。
一点不安なのは、ハリウッドとは比べ物にならないくらい安い予算でここまでのものを作ってしまうと、日本の映画界の傾向から言って映画会社が「次も同じくらいの予算でこれ以上のものができるんじゃない?」とか言い出しかねないところ。むしろ予算を削る可能性すら……。
- 作者: カラー、東宝,庵野秀明
- 出版社/メーカー: グラウンドワークス
- 発売日: 2016/12/29
- メディア: 大型本
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更に追記
それと細かいところでは「防災鎌倉」のアナウンスが気に入っています。モヨコ#シンゴジラ #庵野秀明 #細かすぎて伝わらないシン・ゴジラの好きなところ選手権
— 安野モヨコ (@anno_moyoco) 2016年8月20日
リアルすぎる「防災鎌倉」が流れた瞬間ガッツポーズしてしまった鎌倉市民なワタクシ。