たこわさ

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僕だけがいない街 第十一話「未来」感想

今回の満足度:5点(5点満点中)
(以下ネタバレ)

あらすじ

八代の手により冷たい湖の底へと沈められてしまった悟。辛うじて一命をとりとめた悟だったが、その意識が戻る事は無かった。自分の犯行計画を悉く阻止した悟に興味を覚えていた八代は止めを刺すような事はせず、彼を「観察」する事にした。
佐知子は一人、献身的に悟の介護を続け、やがて15年の歳月が流れてしまっていた。そんなある日の事、病床の悟を見つめていた佐知子の目の前で、遂に悟が目を覚ます。
佐知子の介護の甲斐もあり、順調な回復を見せる悟。ケンヤやヒロミも面会に来てくれたが、意識を失う前後の記憶は全く蘇らない。一方で、15年間で変貌した自分の姿にも驚かず、習った覚えのない感じをスラスラ読めるなど、悟は「なにかおかしい」と違和感を覚える日々を送っていた。
そんな悟の前に、一人の赤ん坊連れの女性が訪れた。すっかり成長しても悟が見間違う事の無い彼女は、雛月加代その人で――。

感想

アバンタイトルの八代のモノローグには思わずぞっとしてしまった。本物のシリアルキラーである八代だが、ただ単に殺人に快楽を感じるのではなく、どちらかというと他人の人生を掌の上で弄ぶことに快感を覚えている、という事か。医師と病院理事との電話の内容や八代自身の言葉から、どうやら悟の治療には少なからず八代の援助があった事が窺えるが、それも八代にとっては上等なワインを寝かせてきた程度の感覚なのだろう。

オープニングの演出は実に秀逸。まさに「僕だけがいない街」と言わんばかりに映像から消されてしまった悟の姿に、何とももやもやとした不安が募る思いだった。
そして本編、悟を介護する為に全てをなげうってきたであろう佐知子の姿に思わず涙してしまった視聴者もいたのではないだろうか? 介護の時間を確保する為なのだろう、コンビのバイトと言うあまりにも彼女に相応しくない仕事を選び、あまりにも質素なその生活。雛月の母親とは正反対の、あまりにも献身的な「母の愛」。悟が目覚めたのは奇跡でも何でもなく、ひとえに彼女の努力故に、だったのではないだろうか?
目覚めた悟の心の声が子供の頃のそれになっている演出も秀逸。あれ以上に彼が「リバイバル」後の記憶を失ってしまっている事を明示する手法はないのではないだろうか? 「二人一役」というものをここまで素直に活かした作品も珍しい。
そして今の悟が一体どんな状況なのか、自然に視聴者に理解させる手法もまた素晴らしい。習慣記憶は「リバイバル」後の悟のものだが、彼には八代に殺されかけた記憶はおろか、雛月を助けるために奮闘した記憶さえもなかった。雛月の事を「加代」と呼び親し気に話す一方で、実は彼女と親しくした記憶はまだ戻っていないというなんともあやふやな存在である事が示され、実にやきもきさせられた。
「リハビリを二倍に」発言の時にはまだ戻っていなかったはずの悟の記憶、それが一体いつ戻ったのか詳細は窺えないが、恐らくは八代と再会して以降のことだろう。もしかすると再会してすぐの事かもしれない。そういった視点で見ると、悟の用心深さが際立ち、あえて二人っきりの状態になった事もかなりの勝算あってのものと思えるのだが……次回はいよいよ最終回、一体どんな結末を迎えるのか。