たこわさ

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瑞沢かるた部復活なるか?「ちはやふる 28」感想

ちはやふる(28) (BE LOVE KC)

ちはやふる(28) (BE LOVE KC)

裏表紙が太一、千早、新の三人がさわやかな笑顔を見せているという詐欺臭い構図の28巻ですが(笑)、それはさておき。
(以下ネタバレ)


太一が去り千早は休部というかつてない危機的状況を迎えた瑞沢かるた部でしたが、机くんとかなちゃんを筆頭にした二年三年の踏ん張りでなんとか下級生達の心を掴み、ようやく新しい形でのまとまりを見せ始めました。が、そこにはまだ田丸妹という爆弾が。

千早の再起

一方、かるたを休んだ途端、かつてないほど成績が上昇しかえって教師陣を心配させた千早。今までかるたに費やしていたリソースはこんなに大きかったのか、と周囲の人間を驚かせます。勉強癖も付き成績も上がり、彼女の目標である教師への道が開けたはずでしたが……かるたから離れて勉強に没頭すればするほど、自分のかるたへの想いを実感する事になったようです。決意の固まった千早は、一人袴を身に付け東京都予選の会場へ。
気合十分の千早でしたが、やってきた部員達はTシャツ姿、しかも予選大会は参加校の増加で一部ルールが改正されて、千早の知っているそれとは全く別物に。そして千早の復帰を心の底から喜びながらも、かなちゃん達はオーダーを優先し千早に補欠を命じる――という、千早一人を贔屓しないできちんとかるた部の面々の行動や努力を汲んだ構成になっていて、正直千早があまり好きではない私としては溜飲が下がったりしました(笑)。

見えてきたもの、足りないもの

さて、千早はレギュラーから外された事で、今まで見えなかった色々なものが見られるようになった気がします。自分がどれだけかるたを愛しているか、貪欲なまでに試合がしたいか。瑞沢かるた部が個人の力量に任せたチームではなく、世代を重ねても強くあろうとする本当の意味での「強豪校」になりつつあること。
でも、それだけではまだ足りない。千早にとっても、かるた部にとっても。
ヒョロくんや須藤に太一の不在を問い詰められて折れそうになる千早の心。今まで部員達の要になり、試合中にも仲間を気遣い精神的なサポートをするとともに全体の舵取りを担っていた太一の不在。褒めて伸ばす肉まんくんと鬼に徹する机くんの飴と鞭の狭間でもがく田丸妹。重くのしかかる「昨年の全国制覇」という重荷――優勝を果たした今、一体どこへ向かえばいいのかという行く先の不透明さ。
傍から見ている須藤にもありありと分かるほどに、太一の不在というのは大きかったわけです。机くんやかなちゃんは部のまとめ役にはなれても、太一のように自分の試合に集中しつつチームの気持ちを一つにまとめるような超人的な事は出来ません。壁にぶつかった時、個々人の手を引いて導くことは出来ても、チーム自体が道に迷った時に先導する事は出来ません。
でもだからこそ、だからこそ千早は、太一がいないからこそ、彼の存在が大きいからこそ、かつて自分と太一が「新ははかるたに戻ってくる」と信じて彼に恥じぬように自分達の道を進んだように、今度は太一を待つことを決めました。彼は必ず戻ってくるから、今年も自分達は全国優勝に突き進む、個人戦でも勝ち進む、太一が帰ってくるのが何年先になろうとも、彼と自分が創ったかるた部を――瑞沢を本物の強豪校にして待つ。そして自分は彼が戻ってくるまでにクイーンになる。かるた部と自分自身の目標を、須藤曰く「すっげー遠くに」打ち建てました。

色々とやきもきさせてくれましたが、千早達はようやくスタートラインに立ってくれましたね。太一という存在が大きければ大きいほど効果的な目標の見定めを。誰よりもエゴイスティックな自分の本質を、誰かの為という方向性を持たせる事で部員全員の目標にしてしまったというか(笑)。まあ、どちらにしろ太一の偉大さあっての事なんですが。

太一復帰のカギ

その太一は、今回全く出番がありませんでした。千早は何年後でも何十年後でも――等という冷静に考えると結構ひどい事を言っていますが、その言葉に納得しないヒョロくんは密かに太一へ瑞沢の現状を伝えるメールを送るなど、太一を待つのではなく呼び戻す道を選択したようです。まあ、彼にとって太一は真のライバルであり千早という天才に立ち向かう同志でもある訳ですから、千早達と同じ位かそれ以上に太一を必要としているんでしょう。実はこの漫画で一番熱い漢なのかも。

そしてもう一人、太一の帰還のカギとなりそうな人物が予選会場に――太一の母親です。千早にはミセスプレッシャーとか酷い事を言われていましたが、彼女が口厳しいのは全て太一の為なんですよね。彼女は厳しいけれども息子の人格を尊重し同時にその能力を信じていて、太一なら出来る事を知っている。でも、太一がかるた部を辞めると言った時に物凄く困惑したのは、今まで自力で壁を乗り越えて来た、自分の要求に応えるだけじゃなく、自分自身の足で自分の道を切り開いてきた太一が、初めて「逃げる」ような態度をとったから、なんでしょう。自分が課した「成績が落ちたらかるた部を辞めなさい」という言いつけを逃げ道にするような太一の行動に。だから、太一の母が太一の弱さと向き合いそれをフォローする事が出来れば、案外彼の復帰は早いのかも。

しっかし、原田先生も須藤も「真島は綾瀬に振られてかるた部を辞めたのか」と実も蓋もない推測を口にしていて、年上達から見たら太一が千早に振られたのは当たり前の事だったのかな、と太一派としては暗澹たる気持ちに(苦笑)。
次巻こそは太一に大活躍してほしい所。千早と酷い大人達を見返してやれ!w