たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などのレビュー・感想・情報を中心にお送りする雑多ブログ。

乱歩奇譚 Game of Laplace 第五話「芋虫」感想

今回の満足度:0点(5点満点)
(以下ネタバレ)

あらすじ

二十面相を名乗り不起訴となった犯人達を殺害していたのはカガミ警視だった。正義感の強い彼がなぜ? 疑問に思う一同を前に、カガミは静かにその理由を語りはじめる――。

感想

言葉を選ばずに今回のエピソードを評すると「非常に胸糞が悪い」ものだった。事件の凄惨さと救いようのなさに対してもそうだが、何より「心神喪失」や「心神耗弱」の大安売りをするその脚本に。
本作は現代社会に近い世界を舞台にしているが、諸々の非現実的設定を見ればファンタジー寄りのフィクションである事は明らかだ。だから、司法における「心神喪失」や「心神耗弱」という存在が現実世界よりも多く認定され、また不起訴や減刑の度合いも強いのだろう、と察する事は難しくない。特に今回はあくまでも「舞台装置」として、ギミックとしてそれらの存在をクローズアップしていた訳だから、現実世界に何かを訴えかけるものではない、と捉える事も出来る。
――しかし、しかしながらやはりあまりにも心神喪失や耗弱を軽々しく扱い過ぎではないだろうか? いくらフィクションの中での出来事とは言え、安易に、便利な舞台装置として使う事に疑問を覚えなかったのだろうか?
「乱歩」の名前を前面に出した、フジテレビの看板コンテンツのひとつである「ノイタミナ」枠の作品なのだから世間の注目度*1は決して低くないだろう。そんな中において、現実世界でも誤解されがちな心神喪失・耗弱について軽々しく、現実世界のそれとはかけ離れた描写を乱発するのは如何なものか、とどうしても思ってしまう。

警察に追われて逃げる、抵抗する、再犯が著しい、経済観念がある、「殺人を行えば警察に逮捕される」という社会的常識を弁えている、「精神病院の通院歴があるからすぐに出てくる」などと自分自身のやっている事とそれに対する司法的・社会的システムを把握しているetc...。こんな連中のどこが「心神喪失」や「心神耗弱」なのだろうか? あれは自分の行動が反社会的だと理解しながらも罪悪感を持たないただのサイコパスであって、一般レベルでの意思の自由がままならない前後不覚の状態を(病的要因により)強いられ、その結果自ら望んだわけでもなく罪を犯してしまった人間ではない。

殊更「社会的不条理」により罪もない人々が無残な目に遭い、事件が解決してもなにものも救われない、そんなただ悲劇を演出したいがための悲劇を描くのがこの作品の目的なのだとしたら、これ以上付き合うのは不毛としか言いようがない。乱歩作品の典型の如く、圧倒的変態性とカリスマ性を持つ犯罪者が非道を行うのならばまだエログロ作品としての面目は立つが、犯人側になんの魅力もないとただの不快な殺人ドラマにしかならない。次回に期待したい所ではあるが、それも難しい事かもしれない。

妖虫

妖虫

今回の題材は「芋虫」であり、カガミの妹の殺され方、そしてその犯人に対するカガミの仕打ちにそれが現れているが、私的にはどちらかというと「妖虫」前半部の不条理さだけを取り出した片手落ちなオマージュのようにも感じた。

*1:一般人への訴求は低いかもしれないが