たこわさ

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加藤元浩「Q.E.D.iff ―証明終了―」1巻 感想

しばらく掲載誌無しの描き下ろし状態になっていた本作品ですが、先日創刊された「マガジンR」誌での連載が始まり根なし草状態から脱却すると同時にタイトルも一部変更、単行本のナンバリングも1からとなりました。
15歳でMITを卒業後わざわざ日本の高校に入り直した変わり者である主人公・燈馬想と、超人的な運動能力と行動力を持つヒロイン・水原可奈の二人が織りなす、「本格」ミステリ漫画である本シリーズですが*1、タイトルが変わっても作風は保たれており、ロジックを重視した「犯人当て」と事件解決法、所々で挿入される理系エピソードは健在。そしてトリックはロジカルでも、犯人の動機は決してロジカルではないという、仄かな苦みも。
今回は王道である「密室殺人」と、100年前に行方不明となった新興宗教の教祖がミイラとなって発見されるも何故かその傍らには当時の最新科学雑誌が――という、実に「らしい」二編を収録。どちらも相変わらず秀逸なミステリですが、後者は特にこの作品の特徴を一話に上手く詰め込んだエピソードとなっている印象。

ながらくサザエさん時空が続き、主人公達が殆ど進級しないで話が進んできた本シリーズですが、今回の連載では燈馬くんと可奈ちゃんが三年生に進級した所から物語が始まり、二人の関係にも変化が――起こる事もなく平常モードなのでご安心を(?)

一つ残念なのは、以前から顕著だった人物作画の簡略化がますます進んでいる事。姉妹編である「C.M.B.」が月刊連載なので作品の質を落とさないためにはどうしても簡略化・記号化して効率を上げないといけない部分があるのは理解できますが、やはりちょっと寂しい想いもあったり。……まあ、肝心の場面で作画に力を入れて来るので、そこら辺の演出を楽しむ事も出来るんですが。

あと、何故か地元の本屋では本作も「C.M.B.」も殆ど置いてませんでした。固定ファンが多くて必ず一定数以上はける作品のはずなんですが。

*1:わざわざ「本格」と強調してあるのは、本格の皮を被ったあの作品だとか、ミステリの皮を被ったギャグマンガのあれだとかと区別する為。