たこわさ

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グリザイアの楽園 6話「ブランエールの種II」感想

前シリーズ視聴済み。原作未プレイ。
(以下ネタバレ)

あらすじ

一姫がタナトスシステムの中に組み込まれ、「生きて」いた。あまりの事に動揺する雄二だったが、記憶の中と変わらぬ彼女の言動にその事実を認めざるを得なかった。
システムの一部として、一姫は雄二に国の為に死ぬよう――ヒース・オスロのもとへ赴き命を懸けて彼を暗殺するよう要請する。かつて姉の言葉を絶対としていた雄二は、昔と同じように彼女の指示をあっさり受け入れる。そしてその上で一姫の身に一体何が起こったのか、それを問うた。

一姫は語る、天音を逃がした後、一部生存者の殺し合いが始まってしまった事、生き残った者も汚染された人肉を食した事で中毒症状を起こし、間もなく息絶えてしまった事、一姫と共に最後まで生き残った先生が一人で食人の罪を背負う為に遺体をバラバラにした事、天音のお蔭で救助隊がやってきた頃には先生は息絶え自分も瀕死だった事――。
そして運が悪い事に、「市ヶ谷」の影響下にある病院に運ばれてしまった一姫は、無傷だったその脳を利用されタナトスシステムの素体とされてしまった。その後の数年間、システムに組み込まれた事で失われてしまった人格と記憶を少しずつ回復し、最近になってようやく自分を取り戻したのだという――。

一方、美浜学園の面々は由美子の準備した屋形船を新たなアジトとし、雄二奪回の機会をうかがっていたが、事前に仕入れていた以上の情報を得られずにいた。しかし、いつの間にかみちるの荷物に忍ばされていたスマートフォンに着信が入り、事態は一変する。発信者は自身が「タナトスシステム」の内、個の存続に重きを置き、他者との共存を担う人格である、と名乗る。システム全体の意志とは異なり、「彼女」は雄二生存の可能性を排除しておらず、利害の一致から彼を救おうとする由美子達に接触したのだという。
状況を鑑み、「彼女」の申し出を受ける事にした一同。中でもいち早く積極的な賛意を示した天音だったが、同時に彼女の脳裏にはある違和感が生じていた。タナトスシステムの話し振りに対する、「メロディは覚えているのに曲のタイトルを思い出せない」ような感覚が――。

感想

タナトスシステムとなり絶大な力を得ていたはずの一姫が、何故雄二の危機には何の行動も起こさなかったのか? という疑問は前回既に湧いていましたが、早くもその理由が明かされました。そもそも彼女はシステムの素体ではあったけれども、意志ではなかった訳ですね……。彼女が人格と記憶を取り戻す切っ掛けを作ったのが、雄二の戦友であるロビーだというのは何とも因果な話。
雄二が一姫の「国の為に死んで」との言葉をあっさりと承服したのは、何も彼が今も姉の支配下にあるという事だけではなく、人生の目的を失い「死を許される」瞬間を待っていた彼にとってそれが好機であったから、というのもあるのでしょう。
一姫は過去の彼女とは違い、一見すると性酷薄に見えますが……美浜学園の面々に助力を申し出た「タナトスシステムの別人格」って明らかに一姫本人ですよね。タナトスシステムが複数の役割の異なる人格の複合体であるという話が全部嘘という訳ではないのでしょうが、一姫がシステムの主導権を握った上で政府に対して面従腹背の姿勢をとり、今回は雄二と彼を慕う少女達を助けるために動いているようにも見受けられます。

一姫の口から語られた、天音が逃げた切った後のバス事故生存者達の末路は……凄惨と言うより悲哀溢れるそれでしたね。「主犯」であったはずの部長と先生が、きちんと人の心を残していた事、その上で狂気の中にいた事……何ともはや。部長が先生に身を任せたのも、彼の「弱さ」を知っていたからなんでしょうね。もしかすると食人行為も生き残るため以上に先生の為、だったのかもしれません。先生も取り返しのつかない事をしてしまいましたが、最後には良心を取り戻して自分が罪を背負おうと工作までして……いやでもメモで告白状でも残した方が効果的だったんじゃ? とか見も蓋もない事も思いましたがね?w

一姫があの場に残ったのが、天音を逃がす為だけではなく残りのメンバーを少しでも救いたいという想いがあったから、という点も何とも悲しい。しかしそれでもどうしようもない状況になった事を悟り、天音を不安にさせない為に貫いていたであろう自信満々で超然とした態度を止め、憂いに満ちた表情を見せるようになった彼女の姿がなんとも印象的。

天音はタナトスシステムの向こう側に一姫の気配を感じ取ったようですが、もしかするとタナトスシステムが美浜学園の面々を味方に選んだ理由には、天音という信頼できる人間が含まれていたから、という要因も含まれているのかな、と妄想。