たこわさ

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Fate/stay night [Unlimited Blade Works] #18「その縁は始まりに」感想

原作プレイ済み。映像化作品全て視聴済み。
(以下ネタバレ)

あらすじ

アーチャーの裏切りはキャスターを倒す為ではなく、凛の令呪の縛りから逃れる為でもあった。行動を制限されなくなったアーチャーは再び士郎への殺意を露わにする。キャスターから解放されたセイバーは彼に立ち向かうが、マスター不在の状況では満足に魔力が使えず、鎧も聖剣を覆い隠す「風王結界」さえも展開できない。対するアーチャーはサーヴァントとして与えられた「単独行動」の能力により、マスターが不在でも二日間は存命できる。結果、二人の戦いは一方的なものになっていく。

セイバーの危機に再び双剣を投影して立ち向かう士郎だったが、アーチャーとの実力差は歴然で軽くいなされてしまう。再び危機に陥る士郎。だがその時、凜の詠唱の声が辺りに響いた――セイバーとの契約の詠唱が。
凜という最高のマスターを得たセイバーはその能力を如何なく発揮し、アーチャーを追い詰め、形勢は逆転する。マスターもいない弓兵が剣士に接近戦で敵うはずもない。アーチャーを圧倒したセイバーは彼に思い直すよう――士郎を殺そうとすることは間違っていると説得しようとする。しかし、アーチャーは逆にセイバーの願い――自分が間違った王であった為に滅んでしまった故国の運命を聖杯の力で変える事――の歪さを指摘する。「何も残せなかったのではない、全てをやり切った上での終わりだと考える事は出来ないのか」と。
アーチャーの言葉――まだこの時代では誰にも語っていない自らの願望とその歪さ――に思わず口を噤むセイバー。セイバーを案じるような言葉を紡ぐアーチャーは、自分の身を案じる彼女への返礼として、自らの真髄を……即ち、彼の宝具を解放する。
数節の詠唱と共に出現したアーチャーの宝具、それは弓でも、ましてや剣でもなく、「固有結界」――自らの心象世界を具現化し現実を侵食する大魔術だった。英雄としてのアーチャーの真の姿は、弓兵でも剣士でもなく、魔術師だったのだ。
アーチャーの心象世界、それは無限に広がる荒野とそこに突き立った無限の剣、そして空に蠢く巨大な歯車という、無機質で不毛な世界だった。理想に殉じ果て英霊にまでなった彼の心象世界の、あまりにも理想などというものとはかけ離れた荒涼とした光景に絶句するセイバー達。アーチャーはセイバーに言い放つ「お前の聖剣でさえ模倣して見せよう」と。もし聖剣同士の打ち合いになれば、セイバーは無事でもその余波だけで士郎と凜は死んでしまう。動きを封じられたセイバー達に、アーチャーの放った無数の剣が襲い掛かる――。

感想

俺はね、セイバー
英雄になど、ならなければよかったんだ

凜の夢――契約時に流れ込んできたアーチャーの記憶――で断片的に語られてきたアーチャーの人生。沢山の人々を救いながらも、彼自身を救う者はなくむしろ守った人々に裏切られまでした、しかしそれでも信念を捨てず理想に殉じたその人生。その果てに、彼は自分の死後をも世界に差し出し守護者――人の世を滅びから守る為の「安全装置」――となった。だが、守護者とは人類を救う者ではなく、人間がその愚かしさから自滅しようとした時にその原因を排除する、人間の身勝手な欲望を処理するだけの存在だった。人々を救う為に呼び出されたのに、それより先に彼らの不始末を押し付けられる……人の世の醜さばかりを直視させられる中、彼はいつしか人の世そのものに絶望した。――最後に、自分の理想に裏切られた。

……作中では断片的な映像でしか描かれていない部分を補足すると、アーチャーは守護者として「人類の自滅の要因」を排除する為に、その原因となった人々を殺し尽くす事を強要された。つまり、人々を救うと同時に同じくらいの人間を自らの手で葬らなければならなかった。「全ての人々を救う」為に英霊になったのに、現実はそうではなかった。

Fate/Zeroをご覧になった方には既知の事ですが、今回アーチャーが指摘したように、セイバーの願望は生前に自らが成し遂げた全ては無駄だったと思い込み、聖杯の力で故国を滅びから救おう、というものです。自分の能力を超えて全ての人々を救う為に英霊となる、その願いに裏切られたアーチャーとしてみれば、同じような願いを抱くセイバーの姿は痛々しくてしょうがなかったことでしょう。ましてや、アーチャーにとってセイバーは……。

それら事実を踏まえる事で、上記のアーチャーの台詞の重みが伝わるのではないかと思います。一人称が「俺」と「私」の間で揺れるアーチャーの心中を思うと、なんともはや。

そんな風にひねくれながらもセイバーの身は案じているというのが実に彼らしいですね。だから、凛に対して非道とも取れる態度を取っていますが、実際のところその真意は量りかねる部分があります。

アーチャーの悲しすぎる過去が全編に渡って描かれたので、ランサー兄貴の漢っぷりとワカメの下衆っぷりが癒し空間でした……。

ちなみに、士郎がアーチャーの無数の剣の投擲を撃墜できたのは、1クール目で示唆されていた「構造の把握に関しては異常な才能を持っている」という点に加えて、「散々自分の能力を理想的なレベルまで昇華させた実物を見せ付けられたから」だったり。士郎の急激なパワーアップにはもう一つ理由があって、それは劇場版では見事にカットされていてゲンナリしたのですが、今回のシリーズではきちんと語ってほしい……ところ。