たこわさ

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戸土野正内郎の新作「どらくま」感想

どらくま 1 (BLADE COMICS)

どらくま 1 (BLADE COMICS)

オンラインマガジン・コミックブレイド連載。4/10に発売済みでしたが、マッグガーデン系の漫画はあまり書店においていないので気付きませんでした……。
さて、「悪魔狩り」や「イレブンソウル」で知られる戸土野氏ですが、今回の題材はなんと「時代劇」――っと言っても相変わらず刀剣とか謎武器とか振り回す戸土野節は健在なのでご安心を(?)。
今回は筆者曰く「名刺代わりになる作品」という事で、第一巻だけで一つの物語を完結させてあります。また、コミックブレイド公式サイトでは第一話が無期限配信中ですので、そちらを読んで気に入ったのならば、是非ともこの一巻の購読をお勧めします。

(以下ネタバレ)

剣と魔法のダークファンタジーだった「悪魔狩り」、SFロボットアクションである「イレブンソウル」と、異世界やら近未来やらが舞台の作品を描いてきた戸土野氏としては珍しい、史実を背景にした時代劇となりますが……相変わらず主人公達がトンデモ武器を振り回す外連味溢れる活劇になっていて安心しました。
同氏曰く、「歴史はからっきし」らしいのですが、中々どうして、トンデモ時代劇として堂に入った作品に仕上がっています。辺に歴史オタクだったりしない分、凝り固まった歴史像に基づいていないから逆にさっぱりしている、という印象も。

主人公である源四郎と九喪のキャラクターも実に良いですね。源四郎は戸土野作品における所謂「ルッカ顔」キャラクターの類型で、「食えない守銭奴、だけど案外義に厚い」人物になっていて、今回は策士として活躍しましたが、本来は九喪と拮抗する強者でもあるようで、二巻以降はその辺りの掘り下げにも期待。ちなみに、キャッチコピーの「だってお金ってイイじゃない。」は彼の口癖。
九喪は今までの戸土野作品ではあんまり見ないタイプのキャラクター。飄々としていて一見ひょうきん者にも見えるけれども冷徹さを醸し出していて――でも実は人情家、という。容姿についても今までの作品にはあまり見られなかったファニーフェイスかつ「異形」感が漂う。戸土野作品の主人公としては新機軸となっていきそう。

なお、一番感心したのは無理に時代がかった台詞回しにしないで、現代的な言い回しに忠実な所。どの作品とは言いませんが、無理に時代劇っぽい台詞回しを取り入れておきながら文法が現代語(しかも邪道)なので味もへったくれもなく読みにくいだけ、になっているような似非時代劇もありましたので、本作品についてはそこら辺の不満は全く無かったり。

作者の前作「イレブンソウル」はマジ名作、オススメです。「悪魔狩り」ともどもアニメ化企画たててくれる猛者はいないものか……。