たこわさ

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「グリザイアの迷宮」感想

前シリーズ視聴済み。原作未プレイ。
(以下ネタバレ)

あらすじ

JBへの報告という形で語られる雄二の今まで――凄惨な幼少期から「戦闘機械」になるまでの過程――が語られる。
一姫の影に隠れ、両親の愛を受けられなかった事。姉だけは彼の事を愛してくれた事――姉の雄二への執着が異常なレベルであった事。姉を失った事で家族が崩壊していった事――狂気に取り付かれた父から母を守る為に彼を殺害し、母は警察の目から雄二を守る為に自らが罪を被り自殺してしまった事。
天涯孤独の身となった雄二の前に現れたのは、父の知り合いの美術商キリハラ――真実の名をヒース・オスロ。彼に引き取られる事で、雄二のさらなる凄惨な日々が始まる――。

感想

原作をやっていないので雄二の過去については第一期の断片的な情報から推測するしかありませんが、推測の遥か上――むしろ下――の凄惨過ぎるそれに慄いてしまいます。
両親や周囲の人間をまるで飼いならすかのように自分の望むとおりに行動するよう誘導していたという、天才である姉・一姫。自分という強すぎる光の影で弟が不遇過ぎる生活を送っている事を知った時から、彼女の弟への強い愛情が芽生えました。しかし、その愛情はむしろ執着に近いもので、まだ幼い彼に性的なスキンシップを求めるその姿はある種の狂気さえ感じられます。
自分の意図通り動くように周囲の人間を誘導していたという彼女の事ですから、弟への数々の過剰な愛撫もなんらかの意味があったのかもしれませんね。そうなると、事故の際に天音と親しくなった事や彼女だけを逃がした事も何か確かな目的があったのでは、と勘繰ってしまいます。天音が導かれるように雄二と出会い、彼の恋人になった事にも彼女の作為が感じられるような気までしてきます。
姉はそのありあまる才能を使って雄二を守りましたが、「弱い人」であった母親も雄二の事を精一杯守ってくれました。彼が父親を殺してしまった時も、自分が殺したかのように偽装した上で、自ら命を絶った。でもそれはきっと雄二にとって辛い事だったのでしょう。「弱い人」であった母親が頑張れたのはひとえに雄二を守る為です。でも、それが母親の死を招いてしまった。自分を守ろうとした女性はみんな死んでいく、雄二がそう思うようになった、もしかしたらこれがそのきっかけなのかもしれません。

ヒース・オスロのもとでテロリストとして育成される経緯は、正直よくある少年兵もののそれと大差ないように感じてしまいまいましたが、ところがどっこいそれだけではなく、ヒース・オスロ性的虐待を受けていたとは……。雄二が性的な行為に手馴れているのに事に及ぶ際にもどこか冷静な理由(の根幹)があんな事だったなんて。
正直、あんな人生を送ってきた彼が、今とても強い正義感(凄い特殊だけど)と、そして優しさを備えているのは奇跡みたいなものですね。多分、回想の最後で彼と出会う事になった師匠――麻子という女性の教育がよっぽどのものだったのでしょう。

さて、長く悲しい雄二の回想は終わり、いよいよ次回から今の、そして未来の彼の姿が描かれることになります。第一期では少女達を救う事に終始した雄二ですが、果たして彼自身の物語はどんな姿をみせるのか。