たこわさ

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アルドノア・ゼロ EP24「いつか見た流星 -Inherit the Stars-」感想及びキャラ考察

1クール目視聴み。
(以下ネタバレ)

あらすじ

突然のアセイラム姫――アセイラム女王の停戦命令により動揺する軌道騎士達。特に、スレインの勢いの尻馬に乗ろうと味方していた軌道騎士は、アセイラムの宣言を受けて有利な方に付くために様子見に徹してしまう。
アセイラムの決意を察し、状況が自分の不利な方に大きく傾いた事を悟ったスレインは、全軍に月面基地を放棄し地球側へ投降するよう命じる。最後まで彼に寄り添う事を望むレムリナをも送り出し、自らは月面基地に残り全ての責任を抱えたまま自爆する道を選ぶスレイン。しかし、ハークライトをはじめとする直属の部下達、そして自らの保身よりも騎士としての矜持を選んだバルークルスは、スレインに殉ずるべく踵を返し、地球連合軍へと最後の戦いを挑む。そんな彼らの姿に諭されるように、スレインも最後の一花を咲かせるべく、タルシスで出撃する。
ハークライトとバルークルスがデューカリオンの部隊と激しい戦いを繰り広げる中、スレインは仇敵である伊奈帆の姿を見付け最後の戦いを挑む。スレインとの決戦を想定していた伊奈帆は、タルシスの未来予知を凌駕する様々な攻撃を繰り出し、戦いを五分に持ち込む。お互いに弾薬も尽き、接近戦で雌雄を決する事になった二人だったが、僅差で戦いを制したのは伊奈帆だった。
動力を失い地球へと落下を始めるタルシス。スレインはやがてくる死による解放を穏やかな気持ちで待つが、伊奈帆のスレイプニールがタルシスを庇うように取り付き、二機は地球へと共に落ちていき――。


感想

破綻もなく、それなりに綺麗にまとめたな、という印象。良くも悪くも、ですが。
スレインがあまりにもあっさりと勝負を諦めてしまったのは意外ですが、よく考えてみれば彼の目的は「アセイラム姫が君臨する世界を作る事」だった訳で、姫が自分の足で歩き未来を切り開く姿を見せ付けられて、自分の役目は終わったのだと痛感したのでしょう。まあ、そもそもスレインがアセイラム自身の力量や覚悟を読み誤っていた事が原因なんでしょうね。彼女は自分の足で歩くことが出来る強い人だった訳で。
スレインと伊奈帆の違いって、結局「どうアセイラム姫を守るか」という命題に対する考え方の違いだったんですよね。姫の障害となるものは全て排除し自らが押し上げようとしたスレインと、姫の理想を守り陰ながら見守る事に徹した伊奈帆。最初の段階で、既に二人の勝敗は決していた。

しかしまあ、アセイラム姫はともかくとして、伊奈帆もよく自分の恋愛感情よりも、愛しい姫の理想を叶える事を優先できたな、と。彼のアセイラム姫に対する執着心は、ある意味スレインのそれよりもよほど執念に溢れたそれだったように感じるのですが、逆に彼女自身を愛しすぎている為に、義眼ちゃん曰く「自分の一部であるように感じていた」、つまり彼女の目的は自分の目的でもある、という信念にまで昇華されていたんでしょうかね。わざわざ危険を冒して彼女の最後の頼み――スレインを救う事を実行してしまったところをみるに、やっぱりそういう事なんでしょうね。プラトニック過ぎてあんまり理解されなさそうですが、個人的にはそのクールさに痺れます。
私的には大局を優先して個人の俗っぽい、純粋な感情が押し殺される展開は好きじゃないんですが、本人達があそこまでサッパリしていると、そういう印象を抱くのも野暮というか。

最終決戦らしく、迫力あるバトルは見物でした。機体性能で上回るスレインを、伊奈帆が原始的かつ効果的な装備を駆使して打ち破るカタルシス。でも、ハークライトやバルークルスの散り際が結構あっさりだったのはちょっと残念に思います。今まで散々、火星のカタクラフト一機に苦戦していた鞠戸や韻子達が、戦力が整っていて母艦の援護射撃もあって伊奈帆が残した戦術データがあったからといって、互角どころか凌駕する戦闘を繰り広げてしまうって……。ちょっとかわいそうな気もしますね。ハークライトもバルークルスも実は義理堅く誠実な人物だった事が最後に分かりましたし。

もっとも、よりかわいそうなのはレムリナ姫かな、とも。「アルドノアの起動権」云々は恐らく方便であり、実際にはスレインと共に敗北を迎える決意を固めていたであろう彼女でしたが、結局スレインは自分と共にある事を選んでくれなかった訳ですからね。もちろん、毒気の抜けたスレインにとって彼女は既に「道具」ではなくなっていたでしょうから、芝居じみた別れの言葉も、あえて突き放す事で少しでも彼女の傷を浅くしようという配慮だったのでしょうが。レムリナにとってはスレインと共にある事こそが望みだったでしょうから、ある意味残酷な決断だったようにも思えます。というか、戦後彼女はどこに行ったのでしょう? 私が気付かなかっただけかもしれませんが、エピローグ部分では描かれなかったような? もしかすると、病室のシーンで耶賀頼先生が足を診ていた入院患者がレムリナなのかもしれませんが。火星で行われている「アルドノア起動権の普遍化」実験に利用されているとかだったら怖い。薄い本が捗(ry

各キャラクターのその後について、具体的に何かを匂わせる描写はありませんでしたし、みんな元気に暮らしていくのだろう、と自然に思えてしまったのは凄い事かもしれません。ただ、不見咲くんが鞠戸大尉の事を物凄い表情で睨んでいたのが謎(笑)。第二期冒頭で、一期では聞き流していたマグバレッジ艦長の「君がモテない理由を教えてあげましょうか?」という言葉に赤面していた事は記憶に新しいですが、結局あの理由は描かれませんでしたね。可能性としては、「マグバレッジ艦長に対して背徳的な感情を抱いてしまったので、本人から恋愛的な言葉を吐かれて思わず赤面してしまった」とか「意中の人がいてその事を艦長に見抜かれたうえであの言葉を受けて、見透かされている事に思わず恥じ入ってしまった」とかでしょうか。何か前者の発想が普通に出ている時点で私の脳みそやばい気もしますが。ちなみに、後者の説は更に「お相手は鞠戸大尉でラストのあの表情はどういう顔をして合えばいいのか分からなくて微妙な感じになってしまった」説と大穴で「耶賀頼先生が気になっていて自分と彼との間に立っている鞠戸を煙たがっている」説を考えたのですが……流石に妄想が過ぎるか(笑)。


さてさて、色々と書いてきましたが、主人公とヒロインの恋愛が結実しないという意味においては私的な好みとは違うのですが、当の本人達が穏やかで満ち足りた表情をしているので不思議とネガティブな印象が残らない、清涼感溢れるラストでございました。もちろん、出来れば伊奈帆とアセイラム姫にはもうちょっと激しい熱情を見せてもらいたかったな、という思いはありますけれども。
そういった意味では、スレインって実は感情面での主人公だったのだな、と。伊奈帆とアセイラム姫が感情を内に隠し理想を優先する人間なのに対し、スレインは徹頭徹尾自らの感情を原動力として動いていた、というか。スレインの最後の涙は、アセイラム姫が外道となった自分をそれでも案じてくれていた事に対する申し訳なさと同時に、個人的感情をむき出しにした伊奈帆との最終決戦で、肝心の伊奈帆は自分の感情を押し殺してアセイラム姫の願いを叶えようとしていたのだ、という感情が理性に敗北した事を思い知らされたから、なのではないかと思います。
ザーツバルムに情が移ったせいで姫を一度は失い、二の轍を踏まぬように自らの感情を殺し理想を掲げその実現に腐心したものの、そのせいで姫を悲しませ自分から離れていく結果を生んでしまった。ついでに自分を愛してくれたザーツバルムやレムリナの事も感情や執着から裏切ってしまって半ば後悔している。感情を優先しても捨ててもどちらにしろそれに振り回される、スレインはだから、実は一番人間的なキャラクターだったのではないかと。そのせいで道を外れてしまったわけではありますが。

道を外れてしまったスレインはともかくとして……同じ方向に歩いて行った伊奈帆とアセイラムですが、二人が歩くのは並行する別々の道であり、それが交わる事はもうありません。恋愛的に見ればバッドエンドではありますが、それでもアセイラムの「美しい思い出です」という最後の言葉にほんの少し慰められる、そんな結末でした。