たこわさ

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東京喰種√A 第12話「研 」感想

原作一部既読。第一期視聴済み。
(以下ネタバレ)

あらすじ

亜門との死闘の末、傷付き倒れ伏してしまったカネキだったが、気が付くと何故か「あんていく」の店内にいた。彼を運び込んだのはそこにいるはずのない人物――カネキの親友であるヒデだった。驚き戸惑い、咄嗟に喰種の証である赫眼を隠す……しかしそんなカネキにヒデは「(カネキが喰種化してしまったことを)知ってた」と昔と変わらぬ笑顔で告げた。
カネキにとって失ってしまった「日常」の象徴のような存在であるヒデ。そんな彼が手を差し伸べてくれている――しかし、ヒデは既に「アオギリの樹」のタタラ達に致命傷を負わされていた。
倒れ伏し、既に瀕死のヒデを抱きかかえながら、カネキはある決意を固め歩き出す――。

感想

誰も救われぬ、殆どの伏線を回収せぬまま終わった物語なのに、脱力感よりも侘しさが湧いてきたという事は、このアニメが名作であった、という証左なのかもしれません。駆け足で「その後」を匂わせる演出をするよりも、カネキという一人の青年が出した答えとその結末、余韻を優先したからこそ、物語が美しく終了した印象を受けたのでしょう。

喰種としての本能を認め喰種として生きる事を決めたカネキ。でも、ヒデは全てを知っても彼の親友のままでいてくれた。「人間」として。CCGに出頭するかの如く彼らのもとを訪れたカネキの内面は推し量るより他ありませんが、「人間」としてヒデを弔う*1と共に、「喰種」としてCCGに討たれる事で自分の「罪」を清算しようとしたのかもしれません。

最後にカネキの前に立ちはだかったのはCCG最強の男・有馬。クインケのケースが開いた音、そして夜明けの街で一人佇む彼の姿から、カネキは彼に敗北したのだ、という事実が伝わります。しかし、有馬の前にはカネキの遺体はない。既にCCGが回収したのか、それとも……。

また、カネキとほぼ相打ちとなった亜門についても謎が残りました。アキラが駆け付けた時、そこには壊れた彼のクインケだけが転がっていました。亜門が死んだのならば、彼の遺体はどうなったのか? 「アオギリの樹」の喰種に捕食されてしまったのか、それとも……?
「勘」の鋭いアキラが最後に零した涙が暗示的にも思えますが、彼女の涙はどちらかというと「大切な人間」の死の証拠を突きつけられて絶望してしまった事からのように思えます。彼女が墓地で亜門にキスしようとした事は、恐らく彼へのあてつけ・反抗心からだったのでしょうが、それでもやっぱり、彼に対してパートナー以上の感情をもっていたのかもしれません。

消えたアオギリの樹、隻眼の梟に連れ去られた芳村、カネキと亜門の行方……様々な謎を残したまま物語は終わってしまいましたが、生き残ったトーカが開いた新たな店の「:re」という名が全てを表しているのかもしれません。

原作を踏まえた上で(若干原作ネタバレ有り)

原作を考慮に入れると、ある程度続編である「東京喰種:re」へ繋げられるような終わり方をしたな、という印象。
原作では行方不明になっているヒデがどちらかというと生死不明状態、というのが決定的な違いではありますが、元々アニメでは原作エピソードを大胆にカットしている傾向がありましたので、完璧にイコールである必要はないのかな、と。トーカがカネキが生きていると信じて待つ、という決意を表明する件も、「:re」の準備中にふと遠くを見て「何か」を探してしまう、というソフトな表現に抑えていました。
「東京喰種:re」については、まだ連載分を合わせても単行本2巻+2話程度しかストックが無いので、現時点でのアニメ化は絶望的なので、あからさまに「続く」状態にしたくはなかったのでしょうが、やっぱりもう少し続きを匂わせてくれたらな、と思うのは欲張りというものでしょうか? 「東京喰種:re」の主人公であるサッサンの存在を匂わせてくれたらな、などとも思ってしまったり。

ちなみに、今回の「√A」自体にはほとんど不満はないのですが、一点だけ残念だった所を挙げるならば、やはりアキラの泣き顔を正面から描いてくれなかった事でしょうか(笑)。原作の「勘弁してくれないかな」というセリフと表情は、私的に東京喰種のベストシーンだと思っているので。あと、政道の死を悼んであげてないのもちょっと可哀想w

*1:倒れた時点でまだ息があったので死んでいないという可能性も排除できない。