たこわさ

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アルドノア・ゼロ EP20「名誉の対価 -The Light of Day-」感想

1クール目視聴み。
(以下ネタバレ)

あらすじ

透明化能力を操る火星カタクラフトとの激戦を繰り広げる伊奈帆達。ようやく敵の能力を突破する糸口を見付け反撃に転じようとしたその時、新たに二体もの火星カタフラクトが現れる。今まで単騎でしか攻めてこなかった火星騎士が複数現れるという事だけでも異常な事態だったが、更に彼らは連携行動をとり伊奈帆達に集中攻撃を浴びせようという戦略性をも有していた。
伊奈帆や鞠戸は火星騎士の戦い方の変化に戸惑いを覚えるも、考える間も与えられず激しい攻撃により味方部隊が次々と撃破されてしまう。追い込まれた伊奈帆達だったが、その時、マグバレッジ艦長がデューカリオンを戦場に突撃させ、直接部隊を回収するという強硬策を実行し、危うく難を逃れるのだった。

火星騎士に戦略性を与えた存在――スレインの功績を讃えるアークライトだったが、伊奈帆達を撃破できなかった事で素直に喜べないスレイン。独立宣言を打ち建て、火星騎士達を見事に統率し全ては順調に進んでいるかに見えたが、その実スレインの内面は大きく揺らぎ、沢山の矛盾を抱えつつあった。
奇跡を信じられず、アセイラム姫が目覚めない事を前提で様々な策謀を実行に移してきたスレイン。しかし、姫の目覚めがその全てを狂わせていた。姫がおおよそ望まないであろう、地球に対する一方的な侵攻を押し進め、アセイラムに成りすましたレムリナを利用して国家建設と姫との婚姻を宣言した今となっては、自分の意のままに動かないアセイラムはむしろ邪魔な存在――しかし、スレインにとってのゆるぎない最優先はやはりアセイラム姫であった。
既に事態は動き始め、もうスレイン自身にも止める事は出来ない。その中でアセイラムを幸せにする方法を模索するという、それ自体が矛盾である自らの行為を、エデルリッゾの前で吐露し自嘲するスレイン。自らを慕うレムリナの事も、今は利用するが自分の中の最優先――アセイラム姫の幸せ――の為にならないのならばその時は……。

一方、スレインの与り知らぬところで、伊奈帆が打ち込んだ「くさび」がその役割を発揮しようとしていた。伊奈帆によりアセイラム姫が偽者である可能性を示唆され、彼に姫の事を託されたマズゥールカ伯爵が、スレインと姫に謁見を申し出てきたのだ。伊奈帆の言葉に真摯さを感じつつも、その発言の内容には半信半疑だったマズゥールカ。しかし、スレインによって急激に推し進められる火星騎士の意識改革を前に、疑念は確信に変わりつつあったのだ。
スレインが不在なためアセイラム姫と直接謁見する事になったマズゥールカは、伊奈帆からの情報を基に、アセイラム姫の真贋を見極めるため、何という事もない会話の中に探りの言葉を潜ませる。姫の答えに、マズゥールカは更なる確信を得、次の策を弄する。
宇宙船の故障を装い、スレイン不在の揚陸城を訪れたマズゥールカは、応対したエデルリッゾの言動から彼女こそが地球でアセイラム姫に付き従っていた侍女であると確信、伊奈帆の名前を出し彼から託されたある品物を姫に届けるよう差し出す。
マズゥールカの手を経て本物のアセイラム姫に届けられたその品物は、かつて姫がスレインから貰った「地球のお守り」だった。お守りを見たアセイラム姫の脳裏には、失われていた数々の、地球での記憶が一瞬にして蘇り――。

感想

三体もの火星カタクラフトに囲まれては、流石の伊奈帆も事態を打開できなかったようですが、そこをマグバレッジ艦長の奇策によって救われたのは、彼が今までただ戦うだけではなく、仲間の信頼を得てきた事の結果のようにも思えます。何気に鞠戸大尉も伊奈帆の動きに付いていくだけではなくそのフォローまでしちゃって。あの日のダメダメ大尉が懐かしくもありますが、それ以上に今の大尉は頼もしく感じます。
戦いでは活躍できなかったものの、センサー類が故障したデューカリオンを義眼の能力でフォローするという相変わらずのチート振りを発揮する伊奈帆くん。しかし、彼は自分はセンサー代わりに徹し、肝心なところはブリッジクルーの経験と腕前であると強調する事も忘れていない。いくら優れた個でも、戦争の中では生き残る事は出来ないと、伊奈帆は痛感しているのでしょうね。だからこそ仲間との信頼関係を重視する。
ただ、自分の事を心配してくれた韻子に対する冷たい態度の訳は少々量りかねます。自分も他人も頼りにしている伊奈帆の義眼の力、しかし今の使い方は伊奈帆の体に多大な負担を強いているようで、陰では一人苦痛に耐えているようです。義眼の使用が体にかける負担については、以前、伊奈帆自身が韻子に伝えていた事。韻子が心配するのも当然だし、いつもの彼なら平静を装い淡々と現在の負荷について解説した上で「問題ない」とか言いそうなものですが……。もしかすると、ユキに対してそうだったように、少々つれない態度を見せて韻子に甘えているのかもしれませんが……それ以外の理由があるようにしか思えず。

さて、一方のスレインですが……見事に孤立していきますね。ハークライトには全幅の信頼を置いているものの、本当の意味での本心は明かしていません。もちろん、アセイラム姫には全てを黙っているしかありません。彼が弱音を含めた本音を吐露しているのは、今の所エデルリッゾのみ。レムリナに至っては彼女が真実自分を慕っている事を痛いほど分かっていながらも、「共犯者」から「道具」に格下げしたようで。自業自得とは言え、自分も辛い思いをして自分の周囲の人間にも辛い思いをさせて、なんというか負のスパイラルというか。
レムリナについては最早同情の念を禁じえません。最初は小悪魔的に見えた彼女ですが、利用されるだけでもいいからスレインの近くに居たいという真摯な願いや、眠り続ける姉を謀殺して完全になり変わろうと画策するも、やっぱり肉親の情は捨てきれずその手を止めてしまった弱さと優しさからは、本質的には善人である事が窺えます。彼女を支えているのは最早「スレインの共犯者」という事実のみなのでしょうに、それさえも与り知らぬところで奪われて……。そして遂に、姉がカプセルの中にいないという、スレインの嘘を知ってしまい……。そりゃあ、アークライトさんも思わず彼女に同情してしまうよな、と。

この鬼畜とも言えるスレインの所業は、かつてアセイラムを失ってしまった*1苦い経験から学んだ「優先順位を間違えない事」という行動原理に基づいているもので、それは同時に伊奈帆の強さの秘訣でもありました。しかし、伊奈帆が自分だけではなく自分の周囲の人間を、そして戦いの中出会った愛しい少女を守る為であったのに対し、スレインは「姫の為」と言いつつも彼女の理想とは正反対の方を目指し、目的の為ならば自分を信頼して慕ってくれる人々をも切り捨てる事を厭わないという修羅の道。まあ、スレイン自身理解しているのでしょうが、それは彼が決して「他人の為」には動けない人間であり、「姫の為」という理念も、ただ偶像としての彼女を神聖な存在と崇めたいという歪んだ愛情に起因しているんでしょうね。つくづく救われない男です……。

そして遂に、スレインの虚飾に満ちた世界に大きなひびが入る時がやってきました。マズゥールカによってアセイラム姫に届けられた、彼女の地球での思い出が詰まった「お守り」が、アセイラム姫の記憶を取り戻す切っ掛けとなってしまいました。彼女が今の世界の状況を、そしてスレインの行動を知った時、スレインの世界は完璧に崩壊するのか、それとも……。
しかし、自分が贈った品がスレインの最も恐れる姫の記憶回復に繋がってしまうんだから、スレインのやることなすこと全て裏目に出るアレは最早呪いレベルですね。ザマーミロ!(コラ

回想シーンでのザーツバルムの毒気の抜けた表情と言動からは、彼が贖罪の気持ちにより喜んでスレインの踏み台になる覚悟をしていた事を窺え、そんな男の想いを受け止められなかったスレインはやっぱり可哀想な最期を遂げてほしい、などと酷い事を思ってしまったのですよ?

*1:「奇跡」は起こらないと思っていた、という事は実質的に彼の中でアセイラム姫は既に死んでいた事と同義。