たこわさ

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Fate/stay night [Unlimited Blade Works] #05「放課後に踊る」感想

原作プレイ済み。ディーン版及びFate/Zero視聴済み。原作ネタバレにならない程度で補足説明など交えて。
(以下ネタバレ)

あらすじ

セイバーの同居に対し、自分達もしばらく逗留すると宣言した大河と桜だったが、大河は突然の仕事で帰宅し、また桜もセイバーと打ち解けた様子で、とりあえず当面の危機は去った事にほっとする士郎。だが、肝心の聖杯戦争についての認識がまだ甘い彼は、セイバーを伴わずに登校してしまう。
一方、士郎がマスターの自覚なく自分の前に現れたら今度こそ倒す、と覚悟を決めていた凛は、サーヴァントも連れずに登校しあまつさえ自分に挨拶までしてくる士郎の覚悟のなさに怒りを覚え、放課後、人気が無くなった校舎で彼に戦いを挑む。
半人前の士郎と一流の凛、二人の技量差は歴然としていたが、士郎は持ち前の運動能力と機転、そして逃げに徹する姿勢で凜の攻撃をしのぎ続ける。一方の凜も、士郎に降伏を勧告するなど、決定的な一撃を繰り出さずにいた。膠着状態に陥った二人だったが、士郎の逃げ場がなくなった時、遂に正面から対峙する事となった。圧倒的有利な状況下で、凛はなお士郎に降伏を受け入れる時間を与えるが、士郎はセイバーを裏切る事は出来ないとそれを拒否する。
いよいよ凛の「とどめの一撃」が繰り出されようとしたその時、校舎に響き渡る女生徒の悲鳴が――。

感想

前回とは打って変わってアクション中心回。このエピソードは旧ディーン版でも映像化されていて、あちらは何だかコミカルな雰囲気を醸し出していましたが、こちらはパッと見シリアスな印象――ではあるんですが、凛役の植田佳奈嬢の演技が、「もうやけくそだ! どうにでもなれやー!!」的なノリをふつふつと感じさせるものだったので、映像面ではシリアスながらも凛の心情としてはある種滑稽なそれになってしまっている、という事を表現していたのかな、と。ディーン版へのオマージュという意味もありそうですね。

さて、余裕綽々の無覚悟状態で登校した士郎でしたが、凜に襲われて修羅場になった途端に素晴らしい回避能力を発揮していたのは、流石という所。彼はよく突撃馬鹿だとか揶揄されるキャラクターですが、実際には土壇場で僅かな生存の可能性を選び取る、逆境に強いタイプの人間なんですよね。死中に活を見出すタイプというか。
しかし、そのすぐ後に、得体のしれない敵が待ち受けているであろう雑木林の中に単身乗り込んでいくところは、やはり特攻馬鹿と思われても仕方ないのかな、と思うところも。ただ、あのシーンは今回はカットされていましたが(多分BDでは追加されると思いますが)、本来は腕に大穴が空いた痛みよりも、凜の顔にあんな物騒な一撃を投擲した敵に対しての怒りの方が強くて、無謀とも言える行動を起こしてしまった場面なんですよね、原作では。今回のこのUBWアニメでは、士郎の内面などを上手に描いてきていて、旧ディーン版(Fateルート)の時よりも士郎に嫌悪感を抱かずに済むような構成になっていただけに、この辺りはちょっと残念。まあ、次回以降士郎が汚名返上する事を祈りましょう。
あと、現状最弱クラスであるはずの士郎が謎のサーヴァント(笑)相手に曲がりなりにも一合二合攻撃をしのいで見せたのは一見ただの主人公補正に見えるわけですが、実はこれが後々の伏線になっていたり。多分、殆どの人は後半にはこの件の事を忘れているでしょうから、せめて私からアピールしておきますw

凜が士郎の父親(切嗣)の話を聞いて、思わず声を荒げてしまうシーンも非常に良かった。Zero視聴済みの方なら分かると思いますが、切嗣さんは父親が自分に受け継がせるためにおぞましい魔術を研究していたなんて過去があるので、魔術自体を憎んでいたし、それを会得してもただの道具の一つだと割り切っていました。更に、士郎を助けるに至った経緯も加わって、彼が魔術と言う呪いそのものとも呼べる存在を近しい人から遠ざけたかった気持ちは強かったことでしょう。
だから、凜が指摘したように切嗣は魔術師であることよりも父親である事を選んだ、と言えるわけですね。じゃあ、なんで中途半端に魔術を士郎に教えたのか? という疑問が当然あるわけですが、原作通りならばそれは物語後半に語られることになるでしょう。
そして、切嗣と対照的なのが凜の父親である時臣氏。やはりZeroを視聴済みの皆さんは良くお分かりの事と思いますが、彼は人格者ではあったけれどもその本質は根っからの魔術師であり、全ての価値判断基準は一族の魔術にとって有益であるか否か、でした。凜にとっては良い父親でしたが、同時に我が子を魔術の後継として疑った事など一度もない――というか、そんな考えがある事さえ思いつかない――根っからの魔術師、それが遠坂時臣
凜は父親を敬愛していますが、それでも自分達が所謂「普通の人間」とは違う事をよく分かっていましたし、自分達の関係が父娘と呼ぶにはあまりにも常軌を逸したそれである事も理解していたのでしょう。だからこそ、切嗣が士郎に魔術を教える事を忌避していた――魔術師ではなく人の子として育ってほしいと願っていた――事実を前に、思わず嫉妬してしまったのでしょう……。なんて、純粋な娘でしょう! アタクシ涎が止まりません(最後の最後で台無しにしつつ今回の感想終わり)。