たこわさ

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「ちはやふる 二十六」感想

ちはやふる(26) (BE LOVE KC)

ちはやふる(26) (BE LOVE KC)

うわぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!
(以下ネタバレ)






(注:今回はあえて太一側に偏った視点でお送りします。次巻感想以降は普通に戻ります。他の巻の感想を読んでいただければ分かりますが、私の感想にはキャラの好き嫌いによるバイアスはあっても、過剰に貶めるような意図はありません。*1キャラ論争はよそでやってください)

千早
おまえはおれが
石でできてるとでも思ってんのか

「強くて 優しくて 頑張り屋」の太一から向けられた痛すぎる言葉。千早の目の前は文字通り真っ暗になった事でしょうが、私的にはそれでも足りないくらいに思います。何故ならば、誰よりも傷付いているのは太一であり、彼を深く傷付けたのはあまりに短慮な千早の態度だから……。

いつでも、千早を傍で支えてきた。彼女が辛い時に、いつも傍にいた。彼女の力が足りない時に、必ず助けてきた。高校の三年間を、千早と共に駆け抜けてきた――。
しかし、それだけでは足りない。千早と――そして新と――同じ場所に立つためには、自分自身も強くならなければならない。だから、全国行脚の武者修行のごとく一人で各地の大会に出場し己を高めてきた。
全ては、千早に寄り添い支える為――。

しかし、そんな太一の想いを欠片も理解できていない千早はこう思う。

なんで 太一 なんで いつも一人で

太一は、傷付こうが壁にぶち当たろうが、一人で何とかしようとする。自分を頼ってくれない。千早はそう誤解してしまった。太一が誰よりも頼っていたのは千早だったというのに、当の千早はそれに気付かず、全てが「太一の強さ」だと誤解してしまった

あまつさえ

新は?

「気が向いたら一緒にかるたしよっさ」
『一緒に』『生きていこっさ』
新は一緒にかるたをしよう、と言った。かるたがすべての自分達にとってそれは「一緒に生きていこう」という事。

全てを一人で何とかしてしまう太一(という千早の誤解)。
一緒に生きていこうと言ってくれる新。

元々、新に恋心に近い想いを抱いていた千早。それに加えて新からはっきりと告白された経緯もある。そしてそれに千早の太一に対する誤解――一人で何とかしてしまう強さをもった人――それらの想いから、千早が太一の告白に、消えそうな声で「ごめん」と答えてしまったのは、千早の認識からすれば自然な事と言えるでしょう。しかし――

いやだ太一いやだ 退部なんていやだ いやだよ太一

あまりにも、あまりにも残酷な千早の言葉
太一は、千早に振られてからも変わらず部活に顔を出し、普段通りに振る舞っていた。それでも、決定的に彼の内面は傷付いていて、今まで完璧だった学業にわずかながら影響が出て、総合成績で机君に1位の座を譲ってしまった。母親との約束から――そして自分自身に課した試練として――落としてはいけなかった成績。その事の重大さを机君は気付いたけれども、千早は気付かなかった。
もちろん、千早は太一の成績が落ちた事など知らなかったでしょうが、それでも彼が「受験に専念したいから」などという理由で大切な、千早達と築いてきた部活動を辞めるなんてありえない訳で、その時点で太一の心に決定的な傷が生じている事に気付くべきだったのに、千早は気付かなかった……。
そして、決定的に自分勝手で独りよがりな、太一の想いなど全く考えない上記のような残酷な言葉を発してしまった
そんな千早の言葉に、自分の想いなど全く届いていなかった、「青春全部かけた」かるた――それは千早への想いと同義で――も全て徒労に終わった事を、再度思い知った太一の心中を思うと、涙せずにはいられません。
太一の三年間、いや、小学生の頃からの決して短くない、青春をかけた時間は、千早の心無い言葉で全て否定されてしまったのです。だから、あれだけ大好きだった、全身全霊をかけたかるたの札全てが、真っ黒に、絶望の象徴として彼の目に映るようになってしまった訳です。

例え報われなくても、想いを受け入れてくれなくても、少しだけでいい、自分の想いがほんの少し伝わればいい。恐らく太一はそう思っていたはずなのに、千早には欠片も伝わらない、理解されない、察してくれない。なんという、絶望。
千早が誰を想い、誰の想いを受け入れるかは色恋沙汰ですので本人の勝手でしょう。しかし、自分の一番身近にいていつも支えてくれていた大切な人の想いを欠片も理解できていなかったばかりか、追い打ちをかけるように自分勝手な願望をぶつけてしまい余計に傷つけてしまった千早の身勝手さ、独りよがりはあまりに酷い、酷すぎる
もう太一は一途に彼を愛してくれた菫(大穴で彼を陰ながら応援していたかなちゃん)とくっついた方が幸せなんじゃないかとさえ思ってしまいます。
そして千早は何も考えず新とくっついて、天然同士の破たんした人生を送ればいいと思います!(というのは言い過ぎか)
私が新を好きではない――太一が三年間かけて築いてきたものを天然な告白で全て台無しにしてしまったところとか――せいもあり、今回は実にフラストレーションの溜まった回でした。つーか、新と千早はかるた以外の事で一緒にいた時間なんて殆どないのに「一緒に生きていこう」レベルの恋愛感情持つとかちょっとあり得ない――(以下、罵詈雑言が続くので省略)。

11/1追記

ちなみに、太一が退部の事を予め机くんと肉まんくんに相談していた所から、千早に対してつらくあたったのは全て計算づくだったかも、とも思ったり。つまりは、自分は千早のパートナーとしてこれ以上一緒にいられないのに、千早はいまだに自分に依存しっぱなしなので、冷たく突き放して、千早に独り立ちしてもらおうという荒療治、という可能性も。
太一の自己犠牲はきっとそのレベルに達していてもおかしくはないので、その線もありかと。例え一時的に千早を絶対的に傷つける事になっても、最終的には彼女の利益になるように、と冷徹な計画を実行できてしまう事も強さですし。

さらに追記

私は太一派なので物凄く好意的な解釈をしていますが、まあ、中立的な立場から見れば、千早はともかくとして机君と肉まん君だけにネゴっといてかなちゃんには何も言わなかった、という時点で太一の行動はかなりはた迷惑ですし、上記のように「わざと辛くあたった」という可能性はとても低いと思われます。
ちはやに対してのキスも、多分千早が全然自分の気持ちを理解していなかった事に対する苛立ちからのものでしょうから、まあ、褒められた行為ではありませんよね、全く。
多分、他の太一派の人達もその点については擁護できないしするべきでない、と思っているのではないかと。……思ってるよね?(汗


次巻27巻の感想は→終わりの始まり「ちはやふる」27巻 感想 - たこわさ

*1:キャラを批判するようなコメントが有ってもそれは物語に対する感想であって、無根拠なキャラ叩きではないという意味において。